研究課題/領域番号 |
25300024
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
KREINER Josef 法政大学, 国際日本学研究所, 客員研究員 (50440102)
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研究分担者 |
小口 雅史 法政大学, 文学部, 教授 (00177198)
赤尾 栄慶 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部, 上席研究員 (20175764)
河合 正朝 慶應義塾大学, 文学部, 名誉教授 (30051668)
須藤 弘敏 弘前大学, 人文学部, 教授 (70124592)
島谷 弘幸 独立行政法人国立文化財機構東京国立博物館, 部局なし, 副館長 (90170935)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 日本美術史 / 仏教美術 / 博物館 / 美術館 / 日欧交流 / 日本学 / 日本観 / 文化人類学 |
研究実績の概要 |
初年度に引き続き、計画全体の円滑な調査活動を進展させる交渉から開始し、その成果として33箇所の博物館から詳細な報告をいただいた。それに日本の研究分担者および研究協力者の成果を加えた報告書「欧州博物館・美術館保管の日本コレクション―仏教美術を中心に」を作成した。各博物館に日本仏教美術専門の学芸員がいない状況のなか、作成した報告書の資料をさらに詳細に分析する。すでに調査対象となることが明らかなのは、モスクワ国立東洋美術館、イタリアのトリノ市立東洋美術館、ドイツのランゲン財団美術館のコレクションである。これから検討しなければならないのは、リスボンの東洋美術館、フランスのリヨン市立美術館、エルサレムのイスラエル国立博物館である。 お札のコレクションは、パリのギメとチューリッヒ大学附属民族学博物館にあり、それぞれのコレクションはこのプロジェクトの海外研究協力者のキブルツ(パリ)、シュタイネック智恵(チューリッヒ)が特別展示の形で紹介した。 2014年8月末にはスロベニアの首都ルブリアナで開催されたヨーロッパ日本研究協会の第14回研究大会でこのプロジェクトの成果をパネルのかたちで紹介した。ここでの報告は、本プロジェクトの最終年度の報告書に所収の予定である。 また小口は、正倉院事務所の専門家の協力を得て、ベルリンの伎楽面を調査した結果、それが東大寺からの流出物で大変貴重なものであること、またミュンヘンの伎楽面と深い関係にあることを明らかにした。できるだけ早く学術論文化して学界に公表することを目指す。須藤はThe Chester Beatty Library Dublin 所蔵の近世仏教美術および写経の調査を実施し、とくに仏龕群が、日本国内では四散してしまったもので近世宗教美術の研究においても重要な存在であることを確認した。島谷は大英博物館・大英図書館において書籍類の集中調査を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各国の博物館・美術館との協力体制が構築できたうえ、日本仏教美術専門の学芸員がいない状況であるなか、本研究プロジェクトには大きな期待が寄せられている。当初計画された重要博物館の調査については、先方の都合により調査が実施できなかったところも出たが、多くは順調に調査を進め、データを蓄積しつつある。また一部のカタログ化も達成できた。 新たに発見されたコレクションを調査し、全てのデータ(年代、解説を含む)を整えたコレクションとして①チューリッヒ大学付属民族学博物館シュピンナー絵画コレクション(これは特別展とレジュメ図録の出版も含む)、②ボードメール財団コレクション、③エッセン・フォルクワング博物館コレクションを追加することができた。 またこれまで交渉が難航していた最大手の大英博物館との企画参加交渉に進展があり、先方の所有するデータベースにリンクする形でJBAEデータベースへの参加を交渉するということで承認していただいた。来年度の実現を目指している。またこれまで調査が難しかったウィクトリア&アルバート美術館の未調査仏教染織コレクションについても価値あるデータを入手できたことは大きい。さらに、ロンドン・ホーニマン庭園博物館で調査の際に追加する所蔵品があることを確認し、この館のコレクションを完全に把握できた。 しかしながら先方の博物館・美術館の要望に合わせた研究分担者、研究協力者の日程調整が難しい点だけは課題して残されている。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度には当初計画した博物館の調査を先方の都合を勘案しながらできるだけ達成し、包括的なデータの充足を目指す。そのため研究分担者、研究協力者、海外研究協力者による現地調査を多く実現できるようにし、それについての成果報告と100箇所以上の博物館・美術館からの報告書の索引(1.所蔵品、2.作成者、3.コレクター)を作成する。これと平行してデータベースに登録するための交渉も進める。 具体的には、ジュネーブ・ボードメール財団コレクション所有の般若波羅蜜多経を再調査し、細かい年代特定と薬師寺朱印の由来を研究する。また未調査の密教絵画二点の存在が新たに確認され、未発表の可能性が高いこの二点も調査する。ウィクトリア&アルバート美術館の日本仏教法具コレクションが未調査である。すでに画像を提供していただく承諾があるが、併行して調査を実施する予定である。ケルン市立東洋博物館副館長からは直接の調査要請を受け、著名な仏教コレクションとの共同調査を予定している。同時にエッセン・フォルクワング博物館で2014年度調査の際に確認された聖観音像・聖徳太子像の具体的な調査と、隣接するデュイスブルク・DKM博物館の初調査を予定している。 また成果の還元方法として日本およびスイスでのシンポジウムないし公開講演会も企画している。例えば2014年に当企画の調査によって新たに発見されたシュピンナー・コレクションを所蔵するチューリッヒ大学付属民族学博物館との共催で、欧州における収集史、および仏教絵画収集の内容に関する公開講演会を予定している。コレクションのみならず、未発表であったコレクターに焦点を当てることが出来る希少なテーマである。また9月に開催予定のジュネーブ市立民族学博物館特別展「ジャポニズム時代の欧州における日本仏教文化」は当企画によるJBAEデータベースを基本に展示品を選択した初めての展覧会となるはずである。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度調査研究を計画した博物館のうち、主として先方の調査受け入れ可能時期と、こちらの調査可能時期が一致せず、何度か交渉を繰り返した後、来年度実施ということで折り合った館(工芸美術館日本部、ケルン市立東洋美術館他)がある。また先方の受入態勢が整わず(他の仕事に忙殺されていて、当方の調査に立ち会う時間が割けないことによる。貴重品を扱う場合は、管理者の立ち会いは必須であるが、調査に長時間を要するため、先方の許可が得られなかった場合である)、次年度送りにせざるを得なかった館(アルバニア・コルチェ東洋美術館他)もある。
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次年度使用額の使用計画 |
上記の館については次年度の調査の確約を得ているので、次年度、順次実施したい。
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