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2016 年度 実績報告書

東ティモールのナショナリズムの人類学的研究:想像される国家と想像される言語

研究課題

研究課題/領域番号 25300046
研究機関大阪大学

研究代表者

中川 敏  大阪大学, 人間科学研究科, 教授 (60175487)

研究分担者 奥田 若菜  神田外語大学, 外国語学部, 講師 (10547904)
上田 達  摂南大学, 外国語学部, 准教授 (60557338)
福武 慎太郎  上智大学, 総合グローバル学部, 教授 (80439330)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2018-03-31
キーワード国語 / ナショナリズム / 言語ゲーム / 文化 / 中心と周縁
研究実績の概要

当プロジェクトは5年計画である。2016年度は、最終年度に予定している国際カンファレンスを射程にいれて計画をたてた。国際カンファレンスの準備という意味とこれまでの調査の社会還元という意味をこめて、東ティモールにおいて小さなシンポジウムを開催した。これまで緊密な協力関係にあった東ティモールのNGOであるラオハムトゥック (Lao Hamutuk) およびヤヤサン・ハック (Yayasan Hak) のメンバー、およびその他の関心のある現地の人々が対象である。研究分担者4名と研究協力者である森田の5名の発表を準備した。残念ながら、相手NGOから、発表は1本だけで、飛び地であるオエクシを題材にしたものを聞きたいという要請があり、急遽森田による発表だけとなった。8月22日にヤヤサン・ハックの会場(首都ディリ)で、Diskusaun Fulan Naroman (Moonlight Discussion)の一貫として森田が発表した。森田の発表はインドネシア語によるもので、タイトルはLegitimasi "Jalan Tikus": Hubungan Negara dengan Masyarakat Pinggiran Dilihat dari Penyelundupan di Perbatasan di Pulau Timor(「『ねずみの道』の正統性:ティモール島の密輸にみる国家と周辺社会の関係」)である。発表の後、たいへんに活発な質疑応答となり発表者のみならず、科研メンバーも発言した。大きな成果をあげたと自負している。
メンバーによる調査はシンポジウムの直前に、それぞれ前年度までのテーマにのっとり行なわれた。12月に行なわれた国内での研究会において、上田(「和解のフォーマット」)と奥田(「権威語としてのポルトガル語」)が発表し、その成果を示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

前年度までのテーマ、「中心と周縁」そして「エポカリズムとエッセンシャリズム」とをかかげて、調査を続けた。
奥田は政府が最も重要視するポルトガル語の国語化を、政府の公式発表の数字の中にではなく、日常のなかに捉えようとしてきた。政府、学校、教会、マス・メディアなどに赴き、精力的に収集されたデータは、これまでの東ティモール研究に欠けていた部分を埋める画期的なものである。福武は独立の中、そして独立の後に活躍するNGOを、NGOの公式発表の中にではなく、じっさいの活動への参加を通じて明らかにしてきた。福武の調査地は国境を越えたティモール島の西部にも及んでおり、NGOのネットワークの中に浮かぶ「国家」というものをじょじょに明かにしている。(特別研究員である)森田は、飛び地オエクシの人々の日常に組込まれた(オエクシをとり囲んでいるインドネシアという国家との)「密輸」に焦点をあてて、オエクシと国境沿いのインドネシアの人々(「二国民」は親族関係で深くつながっている)にとっての「国家」とは何であるかを明らかにしてきた。それは時に抽象的で敵対的であるが、時に個人の顔を持ち、友好的である、不思議な実体なのである。上田は2006年の「内乱」の舞台、首都ディリの「貧民街」ベボヌックでの調査を続けた。住民の間の「和解」にカ
トリシズムが深くかかわっていることを明かにした。中川はこれらの調査の全体を、一つには歴史的(時間論的)視点から、もう一つには民族誌的(空間論的)視点から統合しようと試みてきた。
4年間の調査・研究を通じ、当プロジェクトは大きな成果をあげてきたと考える。

今後の研究の推進方策

今年度は、国際シンポジウムを開催する予定である。この地域の研究を長年国際的に率いてきたオーストラリア国立大学のジェームズ・フォックス教授、および西ティモールと東ティモールとの調査で国際的に著名な西シドニー大学のアンドリュー・マクウィリアム教授を招待して、当プロジェクトとともに国際シンポジウムを行う。
フォックス教授は、自身のティモールおよびロティ島の研究を通じて有名であるが、さらに、(東ティモールを含む)インドネシア東部を「民族学的研究領域」と規定し、比較研究のプロジェクトを、さまざまな形で主導してきた、この領域に関する世界的な権威である。さらに、彼は東ティモールの独立にも積極的に関与してきた学者としても有名である。当プロジェクトとして、彼を招聘できたことはたいへんに嬉しいことである。マクウィリアム教授は、フォックス教授の下で博士号を取得し、そのままオーストラリア国立大学で教えた(現在は西シドニー大学勤務)優秀なティモール研究者である。西ティモールと東ティモール双方で長期間のフィールドワークを行なった少数の人類学者の一人である。
二人を迎えての国際シンポジウムは実り多い結果をもたらすであろうと確信している。
シンポジウムで発表されたペーパーは、今年度中の公刊することを目標に努力する。現在日本文化人類学会の英文学会誌の編集部と交渉中である。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2017 2016

すべて 雑誌論文 (3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 4件、 招待講演 3件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] 不倫と肥満2017

    • 著者名/発表者名
      中川敏
    • 雑誌名

      大阪大学人間科学研究科紀要

      巻: 43 ページ: 81-97

  • [雑誌論文] NGOの人類学は何をめざすのかー民族誌アプローチとアナーキスト人類学の動向2017

    • 著者名/発表者名
      福武慎太郎
    • 雑誌名

      グローバル支援の人類学--変貌するNGO・市民活動の現 場から

      巻: - ページ: 103-123

  • [雑誌論文] 権威語としてのポルトガル語---東ティモールにおける公用語化と言語政策の一考察2017

    • 著者名/発表者名
      奥田若菜
    • 雑誌名

      グローバル・コミュニケーション研究

      巻: - ページ: -

  • [学会発表] Pemandangan dari Nara: Menerusi Projek Perkamusan Miyatake2017

    • 著者名/発表者名
      Toru Ueda
    • 学会等名
      Kamus Miyatake Masamichi and Perkamusan Melayu
    • 発表場所
      Universiti Kebangsaan Malaysia, Bangi, Malaysia
    • 年月日
      2017-02-28 – 2017-02-28
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Between Hierarchy and Precedence2016

    • 著者名/発表者名
      Satoshi Nakagawa
    • 学会等名
      6th International Symposium of Journal Antropologi Indonesia, UI Jakarta, Indonesia
    • 発表場所
      University of Indonesia, Jakarta, Indonesia
    • 年月日
      2016-07-25 – 2016-07-25
    • 国際学会
  • [学会発表] 東ティモールにおける非暴力の思想「ナヘビティ」2016

    • 著者名/発表者名
      福武慎太郎
    • 学会等名
      日本国際文化学会第15回全国大会公開シンポジウム「紛争と融和における文化の役割ーー江戸初期、冷戦期、現代
    • 発表場所
      早稲田大学
    • 年月日
      2016-07-16 – 2016-07-16
  • [学会発表] How to Buy Knowledge in Ende2016

    • 著者名/発表者名
      Satoshi Nakagawa
    • 学会等名
      International Conference on Ethno-Epistemology: Culture, Language, and Methodology
    • 発表場所
      Kanazawa
    • 年月日
      2016-06-04 – 2016-06-04
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 異文化の遊び方2016

    • 著者名/発表者名
      中川敏
    • 学会等名
      日本文化人類学会
    • 発表場所
      南山大学
    • 年月日
      2016-05-28 – 2016-05-28
  • [学会発表] Unexpected effects of policy: A case study of an urban settlement in Eastern Malaysia2016

    • 著者名/発表者名
      Toru Ueda
    • 学会等名
      Inter Congress of International Union of Anthropological and Ethnological Sciences
    • 発表場所
      Dubrovinik, Croatia
    • 年月日
      2016-05-04 – 2016-05-04
    • 国際学会
  • [学会発表] 異文化の遊び方:美学と人類学の出会う時2016

    • 著者名/発表者名
      中川敏
    • 学会等名
      京都人類学研究会
    • 発表場所
      京都大学
    • 年月日
      2016-04-29 – 2016-04-29
    • 招待講演
  • [図書] 貧困と連帯の人類学---ブラジルの路上市場における一方的贈与2017

    • 著者名/発表者名
      奥田若菜
    • 総ページ数
      353
    • 出版者
      春風社

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公開日: 2018-01-16  

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