研究課題/領域番号 |
25301016
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研究種目 |
基盤研究(B)
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
末近 浩太 立命館大学, 国際関係学部, 准教授 (70434701)
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研究分担者 |
吉川 卓郎 立命館アジア太平洋大学, アジア太平洋学部, 准教授 (30399216)
濱中 新吾 山形大学, 地域教育文化学部, 准教授 (40344783)
松尾 昌樹 宇都宮大学, 国際学部, 准教授 (10396616)
宮地 隆廣 同志社大学, グローバル地域文化学部, 助教 (80580745)
村上 勇介 京都大学, 地域研究統合情報センター, 准教授 (70290921)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国際情報交換 / 国内情報交換 / 海外資料・情報収集 / 研究成果の国際発信 |
研究概要 |
3回の研究会・研究打ち合わせ・意見交換を通して、中東諸国とラテンアメリカ諸国における体制転換の歴史的経緯と先行研究および理論的広がりについての議論を重ねた。特に初年度の作業として、研究対象地域やアプローチの異なるメンバーのあいだでの知見の共有に重きを置いた。 第1回研究会では、各メンバーの研究対象地域・諸国について、政治体制とその歴史的変容にかんする基本情報を確認・共有した。中東諸国とラテンアメリカ諸国のいずれの研究においても、各国間で問題の所在が大きく異なる。そのため、政党、軍、市民社会の3つの共通視座を設定することで、地域間の比較研究を目指すことが再確認された。 第2回研究会では、体制転換における軍の役割に着目し、中東諸国とラテンアメリカ諸国のそれぞれの歴史的経験と研究史を概観した。中東諸国については、2011年の「アラブの春」で崩壊したのは、すべて20世紀中庸に革命・クーデタによって成立した「軍事政権」であった。他方、ラテンアメリカ諸国については、軍による政治への干渉・介入の原因の探求を共通の問題意識とした上で、軍が体制転換の各段階に対していかなる影響を及ぼすのかについて、各国の事例および先行研究を参照しながら概観した。両地域において、軍が体制転換それ自体だけはなく、その後の民主化の帰趨を大きく左右するアクターであることが明らかとなった。 第3回研究会では、中東・ラテンアメリカにおける軍の影響力の強さを確認した上で、その動静を含めた体制転換の比較実証研究に向けて、それぞれの地域に関する先行研究および比較政治学の理論を敷衍しながら意見の交換を行った。そこでは、合理的、制度的、主観的アプローチの有効性を踏まえながらも、「差異のなかの共通性」を浮き彫りにすべく、社会階級、経済体制、政治システム、安全保障環境などマクロの視点から分析を進める構造的アプローチの可能性が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
初年度は、2011年の「アラブの春」はなぜ起きたのか、そして、各国の政権の命運はなぜ分かれたのか、という問題関心にしたがって、ラテンアメリカの体制転換の経験と研究の蓄積を参照しながら検討することを開始した。その上で、重要なのは、何に着目して、どのようなアプローチで比較研究していくのか、という問いに取り組む必要があった。 研究会・研究打ち合わせを重ねることで、異なる地域や国家を研究対象とするメンバーたちの知見の共有が進み、その結果、トピックとアプローチについての一定の共通認識を醸成することができた。すなわち、トピックについては、本研究の3つの分析視角である政党、軍、市民社会のうち、初年度は中東の共和制諸国の体制転換およびその後の民主化の動静に大きな影響を与えた軍の体制転換における役割に着目した。アプローチについては、歴史的社会構造アプローチの再評価を行った。アクター中心アプローチは短期的な現象や因果関係をの解明には適しているが、比較政治学の理論的発展への貢献を射程に入れつつも、あくまでも地域研究として打ち出している本研究プロジェクトの方向性に鑑みると、中東とラテンアメリカのそれぞれの地域的な固有性の析出に適したアプローチを採用すべきと考えられたからである。
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今後の研究の推進方策 |
2年目も、引き続き、各メンバーがそれぞれ専門とする国と地域についての実証研究を進めていく。その基本的な方法としては、フィールドワークと現地語文献・インタビューの収集である。 その上で、年3回程度の研究会の開催を予定している。具体的には、以下の課題に取り組むこととする。 第1に、中東の君主制国家のレジリエンス(柔靱性)の比較研究である。これらの国家は絶対的な君主を頂点とした独裁的な体制を採用しており、「アラブの春」を経てもなお体制転換の兆しはほとんど見えない。しかし、社会階級、経済体制、政治システム、安全保障環境などの点で、湾岸アラブ諸国とヨルダンやモロッコのような非産油国とのあいだには大きな違いがある。この異なる2つのケースをマクロ的に比較研究することで、中東の君主制国家のレジリエンスの要因を浮き彫りにしていく。 第2に、前述の中東諸国間の比較研究をもとに、ラテンアメリカにおける体制転換以降の政治展開の過程を見なおす。構造的な要因のうち、経済システムの転換、特に、新自由主義的な経済路線の導入と、政党システムを中心とする政治過程への影響を検証し、政治システムの変動過程を再考する。その上で、中東の体制転換における帰結の差異(体制が転換した事例としなかった事例)についての背景を、ラテンアメリカの事例との比較を行いつつ分析し、両地域のあいだの「差異のなかの共通性」についての考察に取り組む。
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次年度の研究費の使用計画 |
アラブ諸国の政情不安の悪化により、H25年度に予定していた海外調査(エジプトおよびバハレーン)をH26年度以降に延期したため。 引き続き、治安状況を注視しながら、アラブ諸国での調査可否、期間、適切な方法を検討する。
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