研究課題/領域番号 |
25304031
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研究種目 |
基盤研究(B)
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応募区分 | 海外学術 |
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
大塚 攻 広島大学, 生物圏科学研究科, 教授 (00176934)
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研究分担者 |
永井 宏史 東京海洋大学, 海洋科学技術研究科, 教授 (50291026)
小川 奈々子 独立行政法人海洋研究開発機構, その他部局等, 研究員 (80359174)
大河内 直彦 独立行政法人海洋研究開発機構, その他部局等, その他 (00281832)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / 東南アジア / クラゲ類 / 共生 / 稚魚 / 無脊椎動物 / 刺胞毒 / 安定同位体 |
研究概要 |
東南アジア(マレーシア、タイ、フィリピン)では根口類(Lobonemoides robustus、ヒゼンクラゲ、Acromitus flagellatus、A. maculosus等)を中心に共生生物群集を調査した結果、アジ類(クロボシヒラアジ、カイワリ)、クモヒトデ類(Ophiocnemis marmorata)、シマイシガニが広範囲、高頻度で共生していた。また、フィリピンで漁獲されている食用クラゲはL. robustusであることを初めて明らかにした。共生するアジ類は当歳魚に限定されていた。シマイシガニでは宿主からメガロパ幼生も多数発見され、宿主に直接付着、変態した後、宿主上でしばらく成長する生活史を持つ事が推定された。タイ産ヒゼンクラゲとA. flagellatusの刺胞毒強度をスジエビを用いたバイオアッセイで比較したところ、前者が後者の2倍強の強度があることが判明した。クラゲ類のサイズに加えて、毒強度も共生生物の共生個体数に影響していることが示唆された。 瀬戸内海では、ミズクラゲ、ユウレイクラゲ、アカクラゲ、エビクラゲ、ヒクラゲの共生生物群集を調査した。イボダイ、マアジの稚魚及び吸虫類3種のメタセルカリア幼虫が旗口類3種に共生していた。イボダイは消化管内容物調査及び炭素・窒素安定同位体分析から宿主クラゲを食していることが判明した。この捕食を介して吸虫類が中間・延長宿主であるクラゲ類から終宿主であるクラゲ食魚類に感染すると推測される。タコクラゲモエビはエビクラゲのみに宿主特異的に共生していた。マアジ稚魚が毒性の強いヒクラゲに共生することも明らかになった。 有明海ではビゼンクラゲの2012年の夏~秋における現存量推定と共生生物を調査した。奥部、中央部における現存量はそれぞれ3,264~4,200トン、7,300トンと推定された。クラゲモエビの共生が確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
東南アジアにおける野外調査では現地の研究者の全面的、献身的な協力によって非常に質のよいデータがスムースに取得でき、その成果の一部を年度内に学術論文として発表することができた。これまで蓄積していた研究成果も国内外の学会で順調に公表できている。また、宿主クラゲ類と共生生物の安定同位体分析、クラゲ類の毒強度、成分分析も順調に進んでいる。平成25年度には、東南アジアでの研究対象種の出現が現地でなかったことでクラゲ類の遊泳速度測定などができなかった点(宿主クラゲ類2種同所的に出現すると共生魚類の棲み分けが起るので、遊泳速度の違いを測定する予定であった)、瀬戸内海ではイボダイの共生現象が確認できなかったため室内実験の行えなかった点(夜間もイボダイがクラゲ類と共生しているのか赤外線カメラで観察を予定していた)が次年度への課題として残った。また、北日本、南西諸島におけるクラゲ類の共生生物群集の野外調査も次年度以降の課題として残っている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度に実現できなかった点を今年度以降、対策をたてつつ解決していく。 (1)東南アジアにおける調査:タイ、マレーシアにおける共生生物群集構造の解析はほぼ終了したので、今後はフィリピンにおける共生生物群集の調査(平成26年度実施予定)、タイ・マレーシアでの共生生物の棲み分け現象の原因追及(宿主の毒性強度、毒成分、遊泳速度の相違等を調査)、栄養関係の解析(共生生物の消化管内容物、宿主・共生生物の安定同位体分析)、マレー半島東西における共生生物(クモヒトデ類)の個体群レベルでの遺伝的分化、などに焦点を移していく。また、東南アジアにおける食用クラゲ漁業が海洋生態系、特に共生生物のリクルートにどのようなインパクトを与えるのかを推定する。 (2)南西諸島、北日本での調査:これらの地域に産する大型クラゲ類の共生生物群集を明らかにする。平成26年度に現地調査を予定している。 (3)日本における調査:瀬戸内海においてイボダイがクラゲ類と昼夜どのような関係を持つかを室内実験で明らかにする。ミズクラゲ等に寄生する吸虫類、エビクラゲに共生するタコクラゲモエビの生活史の解明を野外観察と室内実験から試みる。 (4)結果の公表:国内外の学会で研究成果を公表し、国際学術雑誌にも論文投稿を活発に行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
日本国内(東日本、南西諸島)で冷水性あるいは熱帯性クラゲ類とその共生生物の採集を当初予定していたが、南西諸島方面への採集に関しては別財源ができたのでこれを利用し、東日本方面への採集についてはクラゲ類の出現状況の情報が十分に集まらなかったために今年度以降に実施を変更したため。 クラゲ類の出現情報が確実に得られた場合には年度内に国内(東日本)での採集のための旅費(東北地方、2名、約250,000円)として使用予定である。この他、消耗品(試薬類、約70,000円)として使用予定である。
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