研究実績の概要 |
映像の感性評価を的確に行うために,ショット間の相互作用を考慮できる予測モデル「一般化重み付き加法形モデル」の適用条件を検討した.さらに,東京オリンピック招致プロモーションビデオを例に取り,ショット交錯が映像の印象に与える心理効果を分析した. 1. 予測関数:以下,a, bをショットとし,abによりショット列を表す.aeでaの1時点促進を,a/eでaの1時点遅延を表し,演算子○をa ○ b=(a/e)bで定義すると,○は外延構造の演算子となる.ab = (ae) ○ b(∵ ae/e = a)だから,abはaeとbの同時結合と解釈できる.この解釈を発展させ,abをbによる文脈効果pを伴ったaの先送りとして(ap)○ bと書き改める.ここで, a ≧ b ⇔ ap > bp; (ab)p ~ (ap)(bp) を仮定して,一般化重み付き加法形モデルU((ap)○ b) = w(p)U(a) + U(b)を誘導した. 2. 動画像評価:東京オリンピック招致プロモーションビデオのうち少年とバスケットボール選手のショット交錯(2回)の後に,少年の(ボールがリンクに引っかかる)トラブルを選手が助けるというシーンに着目して,このショット交錯回数が視聴者の少年を助けてほしいという感情(目的感情)にどのように影響するかを分析した.具体的には,ショット交錯回数を複数個(1~4回)設定した各刺激に対して,視聴者に映像に対する冗長感と目的感情の強さを回答させ,目的感情が冗長感とともにどのように変化するかを調べた.その結果,被験者はある交錯回数で急激に退屈感が現れるタイプと漸増するタイプに分類された.急激に現れるタイプでは,退屈感を認識後さらにショット交錯を繰り返すと目的感情は減少した.このタイプの被験者では最初の1, 2回目のショット交錯が退屈感の急増に大きく影響している可能性がある.
|