研究の最終年度である本年度は、過年度に調査を行った米国環境被害地域(ワシントン州、モンタナ州、テネシー州チャタヌーガ)及び米国の環境法に関する情報の補足収集を行ったほか、引き続き水俣病被害地域における協働的地域活性化への取り組み(市民円卓会議)に参加するとともに、環不知火地域再生研究会メンバー等の研究者との意見交換を重ねた。 また、これまでの調査、研究を通して環境被害地域の再生・復興政策におけるメディエーション(協働的合意形成)に関する総括的な分析、検討を行ったが、住民参加型の新たな地域ビジョンの策定や関係者間の認識の共有、行政・住民間の双方向型コミュニケーションによる相互理解の促進、行政や専門家から住民への必要知識の提供、合意形成のためのファシリテーションの重要性とともに、これらを予め政策に組み込みこむ「制度化」の重要性が明らかになった。 特に、住民が必要とする情報が行政から迅速に提供されるか否かが、環境被害や再生・復興政策に対する住民の認識(フレーミング)や、行政・住民間の関係性に大きな影響を与え、その後の地域再生プロセスを左右することが確認された。 また、研究で得たこれまでの知見をもとに、政策とフレーミング、環境リスクと行動選択、公正・信頼感の構成要素、米国の環境法の具体事例をもとにした政策過程における住民の協働的参加等について、政策学的観点から考察した『政策力の基礎-意思決定と行動選択』成文堂(全258頁)を発刊した。
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