研究課題/領域番号 |
25350007
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研究機関 | 京都工芸繊維大学 |
研究代表者 |
池側 隆之 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 准教授 (30452212)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 質的リサーチ / ドキュメンタリー / イメージの言語化 / デザイン方法論 / コンテンツクリエーション / メディアデザイン / 情報デザイン / 映像デザイン |
研究実績の概要 |
平成26年度は,デザイン学ならびに隣接する学術領域における映像を用いた研究手法や教育実践に関する調査を中心に研究を展開した。隣接領域としてフィールド調査に重きを置く,社会学,人類学,民俗学の3領域を設定し,まずは文献調査から着手した。論文と書籍を要旨にまとめる作業を通じて調査のフレームワークを明確化し,その後詳細に関する聞き取り作業にシフトした。特にそこでは,それぞれの活動において映像を積極的に活用する研究者へのインタビューを軸に調査を行った。調査対象となった研究者は,鈴木岳海氏(立命館大学准教授),村尾静二氏(総合研究大学院大学),田口洋美氏(東北芸術工科大学),水内智英氏(名古屋芸術大学)。また教育実践の見学という形で後藤範章氏(日本大学)にもご協力いただいた。ある。現時点はインタビューのデータ化作業が終わった段階であり,内容の分析検討には至っていない。その作業は平成27年度の前半に行う予定である。
平成26年度はさらに,補完的に映像記録と発信の専門家からの知見を得るという観点から,ドキュメンタリー映画監督を招いての作品上映会を行った。上映会は一般にも公開し,監督らとのトークセッションを行いながら,研究成果の発表と知識還元の場として活用した。そこでは分野横断的な視点で各学術領域と先行する社会実践から抽出したキーワードを配した概念図を解説しながら,監督らとのトークセッションを行い,調査手法としての映像と情報発信手段としての映像の往還的な役割についてディスカッションした。このディスカッションのやり取りもまた音声データとして記録し,平成27年度に分析する予定である。
また,次の研究ステップとして重要と考えられる,新しい映像記録と発信手法に関する実証的モデルを検討するために,環境教育分野の専門家との間でも意見交換を行い,今年度以降の展開についても検討を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成25年度の作業で抽出できた,「映像を媒介とするフィールド情報の『記録・分析・提示』というサイクル」という研究の軸線は,平成26年度の隣接領域の文献調査ならびに研究者へのインタビュー調査でも問題設定を明らかにする上で有効に機能した。一方で,26年度の後半には上記の研究軸に沿う形で,海外(アメリカとイギリス)の映像利用実践が研究対象として浮上した。当初は平成26年度の作業をインタビュー調査中心に据えていたが,この調査に付随する先行事例として急遽研究対象としたため,インタビュー分析作業には入ることができなかった。現時点では「やや遅れている」と報告せざるを得ないが,海外での先行事例研究とインタビュー分析は互いに補完しながら成果を導き出せるため,平成27年度の前半期には作業日程を回復する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,26年度に得たインタビューデータの分析と海外(アメリカとイギリス)先行事例に関する資料収集をまず行う。インタビューデータの分析では,隣接領域の研究者らの発話から映像利用に関する目的,手法,成果などについて整理を行い,本研究の一つのテーマである,「質的リサーチ手法における映像利用理論の体系化」をある程度達成する予定である。また本研究ではもうひとつのテーマとして「映像デザイン研究の深化に関する実証研究」を目標に掲げている。そのため海外先行事例の分析,特に映像の『記録・分析・提示』という枠組みの中でどのような役割を社会的に果たしているのかを海外調査を含めて明らかにしながら実証検討のための材料を集める。現段階では,映像の役割を「環境認知」「アーカイヴ」「基層文化」などのキーワードを想定しており,最終的には研究手法としての映像実践を特定フィールドで展開し,映像利用の効果検証を行う予定である。上記2つのテーマは互いに補完し合うものであるので,平成27年度の中間以降はインタビュー分析と実践研究を同時に進める計画である。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査過程における人件費,特に研究補助としての学生アルバイトに予算を多く計上していたが,実際には予定より作業量が少なく,次年度使用額が生じてしまった。
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次年度使用額の使用計画 |
平成27年度は,調査資料のデータ化と分析作業に相当の労力を要することが予想される。したがって次年度使用額を含め,効果的に人件費を執行する。また,実証研究の実践と成果発表に予算を多く計上しているため,発表場の確保や成果をまとめる媒体の準備に際して計画的な予算執行を心がけたい。
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