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2014 年度 実施状況報告書

トランス脂肪酸により誘導される炎症性反応の解析とその抑制法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 25350138
研究機関聖徳大学

研究代表者

加納 和孝  聖徳大学, 人間栄養学部, 教授 (70111507)

研究分担者 横山 嘉子  聖徳大学, 人間栄養学部, 准教授 (40202395)
研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワードエライジン酸 / TNF-α / アディポネクチン / Toll様受容体(TLR)-4 / NF-κB / マクロファージ / 食作用
研究実績の概要

脂肪酸(TFA)の高摂取は心血管疾患、動脈硬化症のリスクを高める。今回の研究では、工業的に生産される主要なTFAであるエライジン酸が、抗動脈硬化作用を持つアディポネクチンの発現を抑制する可能性を検討した。
実験はYMB-1-E細胞にエライジン酸、他の試薬を添加して培養を行った。mRNA量の解析にはRT-qPCR法を用い、たんぱく質量の変動はウエスタンブロット法にて解析した。
エライジン酸は、アディポネクチンmRNA及びタンパク質レベルの発現を強く抑制し、一方、TNF-α mRNA発現を濃度依存的に誘導した。TNF-αタンパク質の添加により、アディポネクチンmRNA発現は顕著に抑制された。さらに、TNF-αの合成阻害剤、分泌阻害剤、分泌されたTNF-αの細胞のTNF-α受容体への結合阻害剤などによりアディポネクチン合成が抑制されることを見いだした。このことはアディポネクチン合成の抑制にTNF-αが関与していることを示していると思われる。またToll様受容体(TLR)-4の特異的阻害剤、VIPER、TAK-242の添加で、エライジン酸により亢進されたTNF-α mRNA発現は抑制され、アディポネクチンmRNA発現は回復した。TLR-4の情報伝達系のNF-κBの阻害剤によってもアディポネクチン合成の抑制が解除されることを明らかにした。
エライジン酸はTLR-4/NF-κB情報伝達系を介してTNF-α mRNA発現を促し、細胞外へ分泌されたTNF-αがTNF-α受容体を介した情報伝達系を経てアディポネクチン発現を抑制していると考えられる。今回の研究ではさらに一歩を進めて動脈硬化発症のもう一つの原因であるマクロファージへの分化、泡沫化への過程にもエライジン酸が関与していることを突き止めた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

トランス脂肪酸 (TFA) の高摂取は、心血管疾患、動脈硬化症のリスクを高めることが知られている。今回の研究では、エライジン酸がTLR-4/NF-κB情報伝達系を介してTNF-α mRNA発現を促し、細胞外へ分泌されたTNF-αがTNF-α受容体を介した情報伝達系を経てアディポネクチン発現を抑制していることを示した。さらに一歩を進めて動脈硬化発症のもう一つの原因であるマクロファージへの分化、泡沫化への過程にもエライジン酸が関与していることを明らかにした。ヒト単球由来細胞株U937細胞を用い、マクロファージへの分化は、接着細胞数の測定及びCD68、CD147の免疫蛍光染色を行い、評価した。TNF-α mRNA量の解析はRT-qPCR法、脂質蓄積の観察にはオイルレッドO染色を行った。食作用の評価には、蛍光ビーズを用いた。分化誘導剤PMAによりU937細胞に認められるdishへの接着、分化抗原CD68、CD147の発現誘導などの分化形質の発現が、エライジン酸処理により促進された。さらにU937細胞由来マクロファージにおいて、エライジン酸によるTNF-α発現、及び脂質蓄積、食作用の促進が認められた。エライジン酸はマクロファージの分化誘導、さらには食作用を亢進し、アテローム性動脈硬化症のリスクを高めることが示唆された。

今後の研究の推進方策

今回の研究では、エライジン酸がTLR-4/NF-κB情報伝達系を介してTNF-α mRNA発現を促し、細胞外へ分泌されたTNF-αがTNF-α受容体を介した情報伝達系を経てアディポネクチン発現を抑制していることを示した。さらに一歩を進めて動脈硬化発症のもう一つの原因であるマクロファージへの分化、泡沫化への過程にもエライジン酸が関与していることを突き止めた。すなわち、エライジン酸がマクロファージの分化誘導、さらには食作用を亢進し、アテローム性動脈硬化症のリスクを高めることを示した。
以上の結果から、トランス脂肪酸により誘導される炎症反応はTLR-4/NF-κB情報伝達系を介してTNF-α mRNA発現を促進していることによると考えられる。このことはTLR-4/NF-κB情報伝達系を阻害することにより、トランス脂肪酸の障害作用を軽減できる可能性を示すものである。今後はTAK242あるいはVIPERなどのTLR-4/NF-κB情報伝達系阻害剤、またDHA、EPAなどの多価不飽和脂肪酸などを用いて研究を行うことにより、炎症作用を抑制することができるかについて検証を行う予定である。またアディポネクチンはTNF-αの発現を抑制することが知られており、アディポネクチンの抗炎症作用についても詳細な解析を行う予定である。

次年度使用額が生じた理由

研究の進展により論文としてまとめる必要が生じ、エライジン酸によるアディポネクチン発現抑制作用、エライジン酸によるマクロファージの食作用の亢進の2報の論文を作成し、日本臨床栄養学会誌に掲載された。その期間は論文の作成、次の実験のための論文を読むなどの作業があり、実験量が低下し、試薬などの購入量が低下した。そのため27年に繰越となった。

次年度使用額の使用計画

27年度は最終年度であり、エライジン酸により誘導される炎症反応に対する阻害効果のある物質についても、いくつかの候補物質があがってきている。それ故、実験量が増加することが考えられる。論文掲載料などがさらに発生する可能性もある。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件)

  • [雑誌論文] エライジン酸によるアディポネクチン発現抑制作用2015

    • 著者名/発表者名
      岩﨑有希、白石弘美、久保宏隆、横山嘉子、加納和孝
    • 雑誌名

      日本臨床栄養学会雑誌

      巻: 37 ページ: 44-53

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] エライジン酸によるマクロファージの食作用の亢進2015

    • 著者名/発表者名
      岩﨑有希、白石弘美、久保宏隆、横山嘉子、加納和孝
    • 雑誌名

      日本臨床栄養学会雑誌

      巻: 37 ページ: 54-59

    • 査読あり / 謝辞記載あり

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公開日: 2016-05-27  

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