研究課題/領域番号 |
25350378
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
平田 光司 総合研究大学院大学, 学内共同利用施設等, 教授 (90173236)
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研究分担者 |
高岩 義信 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, その他部局等, その他 (10206708)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 研究者集団 / アーカイブズ / オーラルヒストリー / 巨大科学 / 社会史 / 科学政策 |
研究実績の概要 |
2014年度には高エネルギー同好会設立時に若手であった4名の研究者にインタビューを行った。フォーラムとして出発した高エネルギー同好会が「制度」として確立されるにあたって、核研電子シンクロトロンの完成とその利用開始(1962)が重要な役割を果たしていたことが明らかになった。また、1968年に学術審議会から提案のあった1/4縮小案の受け入れは、高エネルギー研究者集団にとって「苦渋の選択」であっただけでなく、一方では、将来計画から宇宙線分野を切り離すことにつながり、高エネルギー研究が独自の成長路線に邁進できるようになった点で研究者集団の自立につながった経緯もほぼ明らかになった。これらの成果は日本物理学会で発表された(文末参照)。
またインタビューおよび文献調査を通じて、1960年代におけるプラズマ核融合、天体核、X線天文学などの核物理学関係の新分野形成も高エネルギー物理学研究者集団の形成とぽぼ同時期に起きていること、それが宇宙線研究の構造変革を内側から促したことがほぼ明らかとなった。これによって宇宙線の研究は素粒子の研究から宇宙の研究へと変質したと考えることができる。これが高エネルギー研究者集団の自立に関するアカデミックな面での推進力となったという作業仮説のもとに、次のステップの研究に進んだ。
日本物理学会における発表:高岩義信、平田光司「高エネルギー物理学研究者コミュニティ形成に原子核研究所・電子シンクロトロンが果たした役割」(2014然秋) 、高岩義信、平田光司「1962 年学術会議勧告「原子核研究将来計画」素粒子研究所の建設地選定の経緯」(2015 春)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究目的であった3つのポイントのそれぞれがほぼ達成される見込みである。
1)高エネルギー研究者集団の成立に関する歴史的な理解をほぼ完成させた。 2)コミュニティーの基盤形成の重要ファクターとして想定されたいくつかのポイントについて、ほぼ検討が済んだ。後継者養成システムについては高エネルギー物理学研究所(KEK)における受託学生制度、夏の学校の開催などの他に、主要な大学における講座新設もあったことが重要である。共有資産としてKEKが半永久的な「基地」となった。意思決定機構も高エネルギー委員会における議論が実質的なものとなり、さらにKEKにおける運営協議会などの基盤的な仕組みが完成した。学術会議や文部省など各セクターとの相互作用がコミュニティー形成に果たした役割については2015年度の課題である。 3)隣接諸分野との比較としてHEP 研究者集団とほぼ同時期に形成された巨大科学・技術(核融合、宇宙、原子力など)との比較について、検討を始めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
当初の目標のすべてではないが、かなりの部分が達成されたので、残りの部分も追求しつつ、とりまとめに入る。
2015年度中に研究者集団の形成、成立に関する社会史的な論文を執筆する。その準備として科学史学会およびInternational Conference on the History of Science in East Asiaで中間的な成果を発表し、学界の批判をあおぐ。
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次年度使用額が生じた理由 |
インタビュー対象者の健康状態などにより予定の調整が難しく、予定の一部が年度末となり、書起しなどの外注が間に合わなかった。また一名は来年度実施となった。また日程上の都合により国際会議に参加できなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
新年度になって書起しの外注はすみやかに行い、インタビューの日程調整も進んでいるの。また、新年度には分担者も国際会議に出席する予定であり、以上に次年度使用額をほぼあてることになる。
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