2016年度には、それまでの成果の一部をとりまとめて学会発表を行い、学術論文として執筆した。日本の高エネルギー研究者集団の形成にとって(1)原子核将来計画の存在、2)東京大学原子核研究所における電子シンクロトロンの完成と運用の開始、の二点が重要なポイントであることは昨年度までの研究で明らかとなっていたが、そこに3)研究者集団の意思決定機構の確立が重要であることを明らかにし、論文「日本の高エネルギー研究者集団の形成における科研費総合研究宮本班の役割」(著者は研究代表者および分担者)としてまとめた。原稿を日本科学史学会の会誌「科学史研究」に投稿した。投稿は2016年6月だったが、編集部からの返答に時間がかかり、掲載決定は年度内の2017年2月となったが、掲載は2017年4月号になった。
本課題による研究の中心となる「発見」としては、研究者集団が形成され、持続的に発展する上での条件として、上記1)から3)を条件とする「研究サイクル」の存在を示し、その実例として高エネルギー研究者集団の形成を示したことがある。科研費総合研究宮本班の活動を通して、この条件が確立したものである。その後、この集団は研究の持続を最上の目的として集団で行動することになったと考えられるが、その活動については、この論文では簡単にしか触れられなかった。集団のこのような動きについての詳細、また、他の様々な分野における「研究サイクル」の有り様については、今後の研究課題となった。
高エネルギー研究者集団と学術会議原子核特別委員会の既存のグループとの関係についても、さらに踏み込んだ研究が必要であるが、上記「発見」によって得られた視点を軸にさらに作業を進めることができる。
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