発達性協調運動障害を示す児童における学用品の操作を、Kinematic/Kineticに分析を行う評価機器の開発と、障害特性の把握、介入方法の提案を行うことを研究の目的とした。昨年度開発した3軸センサーを用いたハサミ操作の分析とコンパス操作時の針への加重について疾患別に調査を行い、神経学的・心理学的特性との関連について分析を行った。結果では不器用を主訴とし神経学的に姿勢筋緊張が低く手指の協調運動が未成熟な児童では、ハサミ操作で定型発達児ではみられないループの外側に添えている示指で垂直-外側方向での圧力が検出され、ループ内では3軸方向への圧力の不均一が生じることが確認された。そのため、動作としては肩関節の外転と前腕の回内が生じやすく、そのため切る際の紙送りでも、紙を保持した左手を上方に送るものが多いことが明らかとなった。この特徴は運動機能の神経学的兆候を示さず視空間認知の問題を主としている発達障害児では認められていなかった。一方、コンパス操作では発達障害児のほとんどの対象者で垂直方向に過剰な圧力が生じていること、コンパスを回転させる際に机上面と水平方向に滑りが生じ均一な円を描くことが難しい結果であった。この圧力の変化は、肩関節の外転や肘関節の屈伸動作に伴って生じており、空間での上肢挙上肢位の維持と手指の操作を同時に行うことの困難さによるものと考えられた。この特徴は神経学的・心理学的特性の差異とは関係なく認められており、課題としての難易度が影響している可能性も考えられた。 上記の結果に基づいて、ハサミ操作でループ内の力の分散が定型発達児や健常成人で認められた垂直(閉じる方向)-刃先-外側(左側)、指の動きとしては対立-掌側外転方向に向かうように、ループの形状を粘土で採型し、3Dプリンターで樹脂による自助具のサンプルを作成した2症例に対して介入し一定の効果を確認している。
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