研究課題/領域番号 |
25360009
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
増田 和也 高知大学, 自然科学系, 特任助教 (90573733)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 熱帯泥炭地 / 開拓史 / マレー農村 / ビンロウジュ / サゴヤシ / スマトラ / マラッカ海峡 |
研究概要 |
インドネシア・スマトラ中部の東岸は広大な泥炭地で構成され、泥炭地開拓は有用樹栽培と連動して進展してきた。栽培樹木からの産物はマラッカ海峡対岸のマレー半島やシンガポールに運ばれ、その生産・流通・消費にはさまざまな民族、市場や制度が関係してきた。このため、同じような生態条件にありながら、社会文化要因のちがいにより開拓過程が異なるかたちで展開しうる。本研究は、有用樹栽培の分布と変遷、生産地における社会構成、流通・消費地における社会背景、国家政策・法制度に注目しながら、二つの地域を比較することで泥炭地開拓のダイナミズムを描き出すことを目的としている。 平成25年度は2回の現地調査を実施した。2013年10月にはリアウ州ブンカリス県ブキット・バトゥ郡の村落にて、2013年12月から2014年1月にかけては同州メランティ島嶼県西トゥビン・ティンギの村落で聞き取り調査を実施し、古老から村落開拓の歴史についての情報を収集した。その結果、ブキット・バトゥ地域ではパラゴムに加えて、1960年代までヤシ科のビンロウジュが重要な栽培作物であり、同地域沿岸部で広く栽培されていたことがわかった。ビンロウジュの実は集積地であるブンカリスを経由して、おもにマレー半島に輸出されていた。現在、同地域でのビンロウジュ栽培は著しく減少しており、パラゴムとアブラヤシの栽培地が占める。一方、トゥビン・ティンギ地域ではサゴヤシ栽培が盛んであり、現在も同地域の主たる生産物となっている。また、サゴヤシ農園の拡大には華人商人の存在が重要であった。このように、二つの地域は直線距離で100キロメートルほど離れているにすぎないが、主たる栽培作物が大きく異なる。今年度の研究では、聞き取り調査で得られた情報と現地で収集した文献資料を照らし合わせながら、それぞれの地域の開拓と土地利用のおおよその過程を明らかすることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定していた2回の現地調査を実施し、二つの地域について重点的な調査を行う村落をそれぞれ選定するとともに、現地住民の協力を得て、基礎的な資料を収集することができた。ただし、本務の都合により当初予定していた調査期間をやや短くせざるを得ず、聞き取り調査を実施したインフォーマントの数に限界があった。以上のような課題があるとはいえ、平成25年度の研究目的をおおむね達成できたといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
平成26年度は、現地調査で収集した一次資料と二次資料を整理・分析するとともに、国内で入手できる文献をもとに、19世紀末から現在までを射程にして、スマトラ、マレー半島、シンガポールの社会経済史を整理する。そして、現地調査で明らかになったミクロな事象をマクロな文脈のなかに位置づける作業をおこなう。また、2回の現地調査を実施し、前年度に訪れた村落で資料を追加するとともに、二つの地域内をそれぞれ広く廻り、各地域における開拓史、栽培作物の変遷と分布を大きな視点で把握することを目指す。さらに、平成27年度にはマレーシアおよびシンガポールでの調査・資料収集を計画しており、それに向けた準備を進める。
|