研究課題/領域番号 |
25360009
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研究機関 | 高知大学 |
研究代表者 |
増田 和也 高知大学, 教育研究部自然科学系, 特任助教 (90573733)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 熱帯泥炭地 / 開拓 / 有用樹栽培 / 集落形成 / 越境 / スマトラ / リアウ / マラッカ海峡 |
研究実績の概要 |
インドネシア・スマトラ中部の東岸は広大な泥炭地で構成され、泥炭地の開拓は19世紀後半以降から徐々に始まり、20世紀後半より本格化した。そのプロセスは有用樹栽培と連動して展開してきた。栽培樹木からの産物はマラッカ海峡対岸のマレー半島やシンガポールに運ばれ、その生産・流通・消費にはさまざまな民族、市場や制度が関係してきた。このため、同じような生態条件にありながら、社会文化要因のちがいにより、開拓が異なるかたちで展開しうる。本研究は、有用樹栽培の分布と変遷、生産地におけるコニュニティの構成、流通・消費地における社会背景、国家政策・法制度に注目しながら、二つの地域を比較することで泥炭地開拓のダイナミズムを描き出すことを目的としている。 平成26年度はインドネシアで2回の現地調査を実施した。2014年10月の渡航では、調査許可関連の手続きに時間を費やし、おもにジャカルタやプカンバルといった都市部に滞在する時間が長く、文献収集が中心となった。1930年代に発行されたリアウ州沿岸部の地図を入手し、当時の対象地域の集落の分布と土地利用について分析をしている。2014年11月にはリアウ州ブンカリス県ブキット・バトゥ郡の村落にて聞き取り調査を実施し、古老から村落開拓の歴史についての情報を収集した。その結果、同地域の沖積土壌帯には古い時代から村落が形成されていたものの、泥炭湿地が海岸付近まで迫っている地帯では第二次世界大戦とその後の独立戦争期、その後の政治的混乱期に、マレー半島やブンカリス島、ジャワ島などの他地域から混乱を逃れてきた人びとが移り住んだことをきっかけに開拓が始まったことがわかった。そのため、マレー半島に近しい親族をもつマレー人世帯も少なくなく、現在も両国間の行き来があり、それが新しい有用樹栽培の導入や出稼ぎなどリアウ側の生計活動に少なからず関係していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初は2回の現地調査を予定していたが、1回目の渡航では調査許可手続きに時間を費やしたために、調査地に滞在することができず、都市部での資料収集とその分析に力を注いだ。2回目の渡航では現地調査を実施できたが、本務校での勤務の都合により調査期間を予定より短縮せざるを得ず、広域調査を実施できなかった。代わりに、特定村落で重点的な聞き取り調査をおこなった。以上の点で、研究の達成度は当初の計画よりもやや遅れている状況にある。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、これまでの現地調査で収集した一次資料と二次資料を整理・分析する。とくに1930年代発行の地図を手がかりとして当時の集落分布と土地利用を分析し、1980年代および現在の状況と比較する。あわせて、19世紀末から現在までを射程にして、スマトラ、マレー半島、シンガポールの社会経済史を整理する。そして、現地調査で明らかになったミクロな事象をマクロな文脈のなかに位置づける作業をおこなう。また、2回の現地調査を実施し、前年度までに訪れた村落で情報を補足するとともに、それぞれの地域の村落を広く廻り、域内の村落における開拓史、栽培作物の変遷と分布を大きな視点で把握しながら、最終成果報告に向けたデータのとりまとめをおこなう。
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