本研究は11世紀後半から13世紀初頭に英仏両国で制作されたロマネスクの大型聖書本挿絵と詩篇序章挿絵の作例等を広く渉猟、検討することで、12世紀後半から13世紀初頭にかけて英仏両国で共有された美術の特質の一端を明らかにするものである。この時期、当該地域の図像数は増加傾向にあったが、その選択には一貫性が認められず、発展の道筋を捉えることはきわめて困難であった。しかし、仏カペー朝に婚姻という形式で深く分け入った英プランタジネット朝の妃たちのサークルに注目すると、いくつかの作例に共通する図像、プログラム、スタイルを見出すことができ、これらの作例が1200年様式生成への道筋も示していることが理解される。
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