かつて広く使用された5弦チェロの衰退は、音楽史の推移からチェロに求められる音量と音質の変化が最大の理由と推察されるが、その詳細な資料は少ない。本研究は「多弦隆盛時の名工の5弦チェロ製作値をもとに現代の良質な素材で5弦チェロを製作、音響特性を試奏し、4、5弦楽器の為の多様な楽曲を5弦チェロで演奏する可能性の追求」を目的としたものである。結果、その音響特性は想定を下回るもので、一部例外を除き、5弦チェロは4弦チェロに比肩する楽器たり得ないことが判明した。しかしながら、本研究で得た楽曲製作や試奏結果などの詳細なデータは、多弦楽器の使用を試みる奏者、製作者の考察の一助となったこともまた明らかである。
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