近年、華道・茶道といったいわゆる伝統文化への関心が再び高まりを見せている。しかし、近世に数多く出版された花道書については、その概要も十分に把握されておらず、体系化もなされていない。本研究は、近世いけばな研究のためにも花道書、花書の基礎研究が必要であると考え、本文および花型図を集成し、体系化をはかる。 平成25年度は、データベース構築の基礎作業として、申請者が所属する池坊短期大学所蔵の花道書の書誌、本文、花型図の基礎データの蓄積を行った。特に、立花に関しては、池坊短期大学所蔵資料のみならず、天和、貞享年間以降刊行された『立花大全』『立花正道集』をはじめとした花道書の収集を行い、本文と花型図の比較検討を行った。その結果、書物間で、本文、花型を相互に引用しあっている状況が確認できた。また、増補改版や、いわゆる海賊版の刊行、あるいは、重宝記において花型図や本文が引用されることによって、定型的な花型と花型に伴う理論とが一般に流布したと見ることができる。 定型的な花型と理論が書物によって流布したことは、池坊をはじめとしたいけばなが各地に拡大する基盤となったと考えられる。一方、家元の花型図、社中による花型図は、花会の図録ともいうべきものであるが、これらは花道書の定型と対をなすものとして検討する必要がある。 ところで、岐阜は、いけばなが盛んであった地域の一つであるが、史料収集を行ったところ、主として18世紀以降の、池坊の伝授状、花会の記録等が確認できた。特に、いけばなを介して形成された人脈が把握できる点は重要である。
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