従来言われている動詞アクセント型と否定形アクセント型の対応があるかどうかを調査した。生年1920年~1995年、の東京3世(以上)と東京2世計54名を対象に、起伏型アクセント動詞(見る、書く、覚える、手伝う)と平板型アクセント動詞(着る、行く、教える、働く)の8語の否定形を使った各31の例文の読み上げ調査を行い、否定形のアクセントを調査した。その結果、平板型動詞4語の各14の例文を除き、伝統的な対応がみられた。例外の平板型動詞否定形14例のうち、文末の否定形9例の平板型の割合は;1920-29年生まれ(9名)74%、1930-39年生まれ(10名)66%、1945-60年生まれ(10人)83%、1967-95年生まれ(11人)93%と、戦後生まれの若い人ほど多い。つまり、戦前のほうがアクセントが多様で若い人のほうが「従来の東京アクセント」と記述されたアクセントを使っていることになる。しかし、若い人には東京方言の音声的特徴が見られず、テレビのを普及による一種の共通語化といったほうがいい現象かもしれない。 次にどういう属性の話者が平板型動詞否定形を平板型でいっているのかを調べるため、Cambers(2002)のregionalityの考えにならって「地元度」という指標を導入した。本人の出身地、両親、祖父母の出身地、通った小学校について試みに数値を与え 「地元度」を算出した。合計が小さいほど地元度が高くなる。その結果、地元度が高くても伝統的アクセントの割合が低い人、地元度が低くても伝統的アクセントの割合が高い人はいるが、全体としては地元度が高い人のほうが伝統的なアクセントの割合が高いというゆるい相関がみられた。親や祖父母が東京出身で、地元の学校に通った人のほうが、そうでない人より東京の言葉を覚えやすいということである。
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