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2013 年度 実施状況報告書

現在の中央アジアにおけるリングァフランカとしてのロシア語の特徴と変容の研究

研究課題

研究課題/領域番号 25370458
研究種目

基盤研究(C)

研究機関東北大学

研究代表者

柳田 賢二  東北大学, 東北アジア研究センター, 准教授 (90241562)

研究期間 (年度) 2013-04-01 – 2016-03-31
キーワード中央アジア / ウズベキスタン / ロシア語 / リングァフランカ / 言語接触 / クレオール
研究概要

サマルカンド出身のロシア語単一話者への聞き取りを目的として2回の調査を行った。9月には20歳代の教諭から「サンクトペテルブルグで働いている弟が、帰省するたびに”ペテルブルグではそうは言わない”と言って私たちの言葉を直す。例えば私たちはDa(=Yes), Khorosho(=Good), Ladno(同)の意味でKhаiと言うが、あそこではそう言わないと言う。また、私たちの話し言葉では普通年下のbrother, sisterをbratishka, sestryonkaと言い、年上のbrother, sisterをbrat, sestraと呼ぶが、ロシアではこの区別をしない」 との証言を得た。これは同地のウズベク語・タジク語両者にまたがる広域方言語彙であるKhаiや、非ロシア人のロシア語で一般に行われている兄/弟、姉/妹の区別が同地のロシア人の話し言葉に入り込み、ロシアのロシア語にないことに気付きにくいほど当然の現象になっていることを示す。12月には英語が堪能な30歳代の米国企業管理職に会い、非ロシア人のロシア語に共通して見られる、時の従属接続詞kogda(=when)が文頭ではなく文頭から2番目の位置を取るという特徴を含んだ文を作って聞かせ、許容されるかを尋ねた。この際、これまでの観察で頻繁に見られた従属節の主語が文頭に来る場合のみならず直接目的語が文頭に来る場合でさえもkogdaを文頭から2番目の位置に置くことについて肯定する一方、syuda(=ここへ)という副詞を文頭に置き、kogdaを2番目に置いた文については強く否定し、同席のウズベク人協力者(40歳代)も同じことを言うという出来事があった。この事実は、シンタクス面においても非ロシア人のロシア語がロシア語単一話者の話し言葉に強く影響し、ロシアのロシア語にはない文法規則が発生していることを示す。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ウズベキスタンについては予想以上の知見が得られ、26年度以降の研究の方向が明確になったが、何故かキルギスへの航空券を確保することがどうしてもできず、手つかずに終わっている。そのため、今年度はぜひともキルギスの首都ビシュケクでのインタビューを行いたいと考えている。

今後の研究の推進方策

キルギスにおいても、ウズベキスタンで観察されるのと全く同様の非規範ロシア語的現象をこれまで頻繁に耳にしてきたので、キルギスを訪問できた場合にはロシア語単一話者を探し、サマルカンド市・州出身者に対してしたのと同様のインタビューをする。さらに、ウズベキスタン・キルギス両国において、「時」や「条件」の接続詞がロシアではあり得ない位置を取る現象が可能となる文法的条件を探るため、多くの例文を口頭で語って聞かせ、可否についてロシア語単一話者とバイリンガル話者の双方に尋ねる。研究代表者柳田はかねてから、明らかに一定の特徴を持つ中央アジアロシア語はロシア語と現地諸言語との言語接触の結果発生したクレオールであるとの仮説を抱いているが、1年目の成果により本科研費課題による研究がこの仮説を実証する可能性が生じてきた。

次年度の研究費の使用計画

平成25年度当初の計画ではモスクワの社会言語学者に会って中央アジア帰還者の言語がロシアのロシア語に影響を与えている可能性および最近の中央アジアロシア語についての研究について教示を乞うことを考えていたが校務のため8月中に出張することができず、断念した。また、9月現地調査ではウズベキスタンに加えてキルギスも訪問する予定であったが、3ヶ月前から中央アジア専門の旅行社に依頼したにもかかわらずタシケント(ウズベキスタン)-ビシュケク(キルギス)間の航空機の座席を確保することがどうしてもできず、諦めることを余儀なくされた。このために次年度使用額が生じた。
平成26年4月に高価な英国の言語学書を購入したため、残額はすでに20万円程度に減っている。もし今年度キルギスを訪問することが叶えばこの程度の残額は確実に費消することになり、さらに次年度に繰り越すことはない。

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公開日: 2015-05-28  

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