研究実績の概要 |
『蜻蛉日記』の全用語(自立語)について意味用法を整理し,その全事例を挙げる辞典を作成することが,研究全体の目標である。全用語の全意味用法を挙げた辞典として,源氏物語のもの,万葉集のものがあるが,全事例について逐一意味用法を記述した辞典は,ない。意味用法の精細な定性的・定量的な記述を,一作品に総合的に行うことは,言語史に寄与するところが大きい。この目標を達成するために,本年度は,用語の意味用法の記述を進めた。 すなわち,出現順KWICの形式から一つの用語の全事例を集め,その事例一つ一つに意味用法の記述を加える,という作業を重ねた。出現順KWICは,木村正仲・伊牟田経久『新編日本古典文学全集 13 土佐日記 蜻蛉日記』(1995年,小学館)の本文により,昨年度前半に作成したものである。用語の事例の意味用法の記述は,昨年度それに続いて開始したものであり,研究の目標である辞典の粗稿となっている。それを集積して相互に調整することにより,辞典の成稿を得ることになる。『蜻蛉日記』全体の用語数は,宮島達夫・ほか編『日本古典対照分類語彙表』(2014年,笠間書院)では異なり3,599・延べ22,400であり,本研究は使用本文が異なるが,同様の数値であろう。その半数程度,異なり1,700余・延べ11,800余を処理した。 なお,記述に際して,本文に問題を感ずるところもあり,最近の本文研究にも接したが,当初採用したものを尊重することとした。
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