本研究では,清朝の第五代皇帝・雍正帝(在位1722~1735)の治世における旗人官僚の登用について分析した。その特徴と,雍正帝のおこなった八旗改革との関係を明らかにすることで,当該時期における宮廷内の権力構造についても再検討した。雍正帝は即位後,皇子時代の旧臣らの能力や適性を見極め,かれらを手駒として効果的に要職に登用していった。その一方で,下五旗の旗王(有力皇族)麾下の旗人官僚については,自らの支配する上三旗に所属替えをおこなう方法(「移旗」)によって,新たな上三旗を構築していった。ただしその際には,雍正帝が旗王に配慮を示し,既存の八旗内の構造の温存に留意していたことを明らかにした。
|