研究課題/領域番号 |
25370848
|
研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
野村 啓介 東北大学, 国際文化研究科, 准教授 (00305103)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | フランス第二帝制 / 地域権力 / パリ万国博覧会 / ボルドー商業会議所 / ブルゴーニュ / ワインづくり / 食の歴史 |
研究実績の概要 |
本研究は、フランス第二帝制下における帝制権力の統治理念とその機能を、地域権力との関係性の維持・構築という局面に注目する観点から、帝制権力の地方次元における体現者である県知事とその管轄地の地域権力保持層との関係にアプローチすることを目的とするものである。 このため本年度は、昨年度にひきつづき1855年および1867年のパリ万国博覧会をめぐるボルドーのワイン業利害の動向に関して、史料収集を継続するとともに、着実に史料分析をすすめた。またこの過程において、昨年度の研究において注目した砂糖のアルコール転化をめぐる問題の延長線上に位置するワインづくりの思想という側面に着目し、当該期の商人によるワインづくりの実践に関する検討をつうじて、20世紀前半期の原産地統制呼称法制(AOC体制)へとつらなる思想的・理念的潮流をはじめとする問題の掘りおこしにも努めた。その成果の一端は、平成27年12月11日に法政大学において開催された日本建築学会の都市史小委員会シンポジウムにおいて発表した。この作業では、史料の多寡という制約から、ブルゴーニュ地方よりもボルドー地方の分析が多くなったものの、ジロンド県の枠組みで帝制権力に対する地域的な自律性ないし能動性の側面をある程度まで浮きあがらせることに努めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定された作業は、前年度にひきつづき、帝制の万博政策にかかわる地域レベルでの具体的問題として帝制外交・通商政策との影響関係の強い地域利害をめぐる主要問題に関連した史料収集・分析であった。そのための作業は、テロの懸念はあったがパリとボルドーにおいて春季休業期を利用してほぼ順調に進めることができた。また、分析結果の一部を口頭発表として公にすることができた。
|
今後の研究の推進方策 |
前年度にひきつづき、ボルドー地方とブルゴーニュ地方に関する史料調査・収集を継続するとともに、史料分析をよりいっそう前進・深化させ、地域権力の分析を着実におこなう。とりわけブルゴーニュに関しては、分析に十分な文献・史料収集が不可欠である。研究の最終年度である平成28年度には、いまだ不安の残る史料的欠落をカヴァーすべく作業をすすめ、ボルドーとブルゴーニュの地域間比較の分析について有効な方法をひきつづき考究するとともに、フランス第二帝制の万博政策と地域権力の動向について、今一度論点を整理し、分析内容をさらに精緻化していきたい。そのうえで、成果の内容をできるだけ多くの学術雑誌論文としてまとめたい。現在構想している論文テーマは、ジロンド県とコート=ドール県の両県万博委員会にみる社会的構成およびワイン出品プロセスの比較的考察や帝制権力との距離感をめぐる問題群である。
|