本研究は,第二帝制下ジロンド県を事例に,地域権力と帝制権力の関係にアプローチする試みである。具体的には,1855年のパリ万博へのワイン出品をめぐる諸利害の動向を手がかりに,その背景となるローカル政治での人材的側面と,これにもとづく地域権力圏の存立可能性とを,地域的差異に留意しつつ検討した。この過程で,格付思想やワインづくりにみる立場の相違が,ボルドー商業と農村部葡萄栽培の地域的対抗関係に関連し,さらに商人と葡萄栽培者という地域間の利害的対照性(ボルドー地方vsブルゴーニュ地方?)にもつらなる可能性が浮上した。のちのAOC法体制との関連においてもまた,さらなる研究の深化が不可欠である。
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