研究課題/領域番号 |
25380148
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
樋渡 展洋 東京大学, 社会科学研究所, 教授 (10228851)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 国際経済危機 / 政党競争 / 政策位置 / OECD諸国 / 経済投票 / 財政改革 / 経済格差 / 空間理論 |
研究実績の概要 |
1. 先進諸国(OECD20ヵ国)の主要政党や議会中位の政策位置が景気循環に連動することを発見し、それを説明する仮設を提示し、その実証を行った。個別の国でも、左右の主要政党の選挙での政策位置は、不況の谷を境にイデオロギー軸上の右に連動し、景気回復とともに左に連動し、分析期間(1970年代から2000年代)全体ではわずかながら右上がりに推移している。 2. 従来あまり着目されてこなかった景気と連動する左右の政党の政策位置を説明する仮説として次のものを提示した。国際的資本移動の増大に伴い、各国政府は景気回復のため、通貨・物価価値の安定を雇用回復に優先させる抑制的財政金融政策を余儀なくされ、その結果、不況後の選挙で、政権党も、政権をめざす責任野党も、直面する経済課題に有能に対応できることを有権者に示すため、「不人気」な政策の継承を是認し、敢えてポピュリスト的拡張政策を回避する。特に責任野党がポピュリスト的政策に退行しないことが政策論議(policy straight-talk)を深化させ、その動きを景気順応的にする一方、主要政党に対抗的なポピュリスト的ニッチ政党の隆盛をもたらす。 3.その検証を計量分析および実際の選挙時の政党指導者の政策発言の事例分析で行った。計量分析は先進20ヵ国を対象に、(比較マニフェストデータより算出した)各政党や議会や投票者の政策位置を従属変数に、景気、「国際金融市場変動に対する脆弱性」、「所得格差」などを独立変数に分析した。更に、事例的検証としては不況直後の選挙で投票や議会の政策位置が左方向に移動した「想定外」事例――1980年代のカナダ、ノルウェー、ニュージーランド、1990年代のスペイン、イギリス、日本、そして大不況のスペイン、ノルウェー、スウェーデン、アメリカ――と特に大不況期の各国の対応を概観し、本仮説の妥当性を、計量分析を超えて明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究の最大の眼目である政党位置の景気順応的変動を説明する仮説の提示とその実証ー計量的実証と事例分析の双方を終了した。学会発表としては2014年10の東京大学とアイルランド国立大学ダブリン校のシンポジュウム(ダブリン開催)、2014年10月の日本政治学会で発表した。今後、2015年の4月のシカゴで開催されるアメリカ中西部政治学会(Midwest Political Science Meeeting)と2015年5月熊本で開催予定の日本選挙学会でも発表の予定である。前者の原稿は完成しており、後者の原稿を持って最終稿としたい。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のもう一つの柱である、経済政策のうち特に政党が審議する財政政策に関しては、それが、景気変動の状況と議会、有権者の中位の先行位置できまることを実証する。この議論の計量分析にあたる部分は、既に2011年の日本政治学会と2013年のサンフランシスコでのアメリカ政治学会(American Political Science Association)と2014年のアメリカ中西部政治学会(Midwest Political Science Meeeting)で発表した。今後は(1)計量分析を裏打ちする事例分析の追加執筆を完成させるとともに、(2)最近完成させた景気循環にともなう政党や政党の重心の位置変動に関する議論と統合する予定である、これにより、経済危機の結果、どのように政党の政策先行が変動し、その結果、どのような詮索の変化がもたらされるかという、本研究の全体像が完成することになる。
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次年度使用額が生じた理由 |
アメリカ中西部政治学会は例年は3月末の開催であるが、年によっては4月初頭の開催であったりする。今年度は4月開催のため、昨年度なく今年度の使用となる。
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次年度使用額の使用計画 |
4月中旬のアメリカ政治学会への旅費がその中心となる。既に航空券等は手配済みである。
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