本研究の最大の発見はOECD20カ国の政党の選挙の政策位置が、特に政権をめぐって競争している主要政党が不況後にイデオロギー軸上を右に移動し、経済回復で左に戻ることである。この意外な結果を説明として、主要政党指導者が、経済運営に関して、経済国際化の深化とともに、特に国際資本移動の増大とともに、イデオロギーよりも政策有能性を競うという仮説を、経済投票理論、国際政治経済、政党競争理論、立法過程などの最新研究に立脚して構築した。 経済投票理論は有権者が経済政策のような合意争点に関しては、イデオロギーよりも有能性を重視することを示唆する。国際政治経済は、有能性を示すために、なぜ主要政党指導者は、失業増大を抑制するための財政出動ではなく、もしろ、財政抑制と構造改革を採用するのかを説明する。政党競争の最新研究は政党指導者は中位投票者の選好に政策を合わせるのでなく、自分の政策に有権者が賛同するよう宣伝することを示唆する。最後に、立法過程論の研究は、党内の反対や野党の妨害を抑えて法案を通貨させて、有能性を示すためには政府指導者は政策の内容を譲歩し、その結果、政策の変化は与党の中位議員よりも議会全体の中位議員の選好を反映することを示唆する。 仮説の実証は、第一に、全政党の移動の計量分析でなされ、政党は、特に主要政党は、景気循環に合わせて失業の増大にもかかわらず右に動くこと。次いで、移動の結果である不況時の財政抑制は、合意が得やすい支出削減に依拠し税制改革に拠らないこと、そして変化の規模は議会中位議員の位置をはねいしていることを実証し、最後に、長期的には、公的債務が大きく、格差が小さい場合以外は、景気循環への経済対応は、国の財政規模に大きな影響がないことを明確にした。
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