研究課題/領域番号 |
25380154
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
南 京兌 京都大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (50432406)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 地方分権 / 国際比較 / 取引費用 |
研究実績の概要 |
諸外国と比べ、日本の地方分権改革が中央地方間の権力関係の変化に与えた影響はなぜ小さいのか。 日本における中央地方間の権力関係は行政的分権から財政的分権の順番に行われたため、変化の度合いが小さい。大森は以下のように述べている。 分権委……当初、明確な方針はなかったが、補助金問題のように政治家や業界団体が鋭感に反応しそうな問題はできるだけ後回しにし、分権推進勢力である地方六団体の足並みがそろい、しかも官僚だけが抵抗する問題の検討を先行させることになった。機関委任事務の廃止問題はまさにそれであった(大森2006:177)。 機関委任事務廃止は、「論より実利」に敏感な政治家にとって「重大なインタレスト」あるいは「政治家としての信念」に関わることではなく、省庁官僚からみれば、学者グループとのやり取りで「廃止に納得できない、うるさい先生(有力政治家)がうしろにいて、とてももたない」という防戦を張ることができなかったのである。抵抗しているのは行政統制に固執している官僚たちだけであった(大森2006:182)。 やりやすい地方分権一括法が先に実行されたので、三位一体は抜本的な改革に至らなかったことを本年度は論証した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度の研究の目的な以下のとおりである。 日本における中央地方関係研究の一つの特徴は、制度そのものを重視するところにある。法制度の説明に力が注がれるだけでなく、その類型化にも関心が強い。その代表的なものが、分権・分離型と集権・融合型に区分する天川モデル(とその応用)である。また近年には、地方政治にも目が向けられている(曽我謙悟・待鳥聡史,2007『日本の地方政治―二元代表制政府の政策選択―』名古屋大学出版会)。しかしながら、地方分権が公共政策のあり方にいかなる影響をもたらすのかを論じる研究はほとんど見られず、加えて、政党組織や政党制のあり方、さらには執政権力のあり方にどのように影響を与えるかを論じることもほとんど行われてきていない。そこで、本研究は、地方政府における公共政策に関心を絞って研究を進める。すなわち、政策分野を横断的に検討することによって、地方政府における公共政策の展開を包括的にとらえることを目指す。 公共政策のうち、市町村の業務であるごみ政策に関して調べた。各都道府県別データの京都府集計結果の処理状況を調べた。平成10年に京都府には44の自治体が存在していた。それが数回の市町村合併と通して平成24年には26までに減少している。本研究の目的は政策の成功と失敗の原因を分析することであるため、合併によって名を残していない自治体の実情を調べることは非常に難しい。なので、合併によってなくなった自治体は分析の対象から外し、平成24年に存続している26の市町村のみを分析対象にした。環境省の廃棄物処理技術情報には平成10年度から24年度までの統計表が公開されている。平成10年度から24年度の間に合併でなくなった自治体を除き、平成24年度を基準に市町村を選択した。 現在のところ、データを集め統計処理を行っている。27年度にはゴミ量変化の原因を追跡する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
京都府の26の自治体、および、政令指定都市におけるゴミ量の推移の因果関係を本年度は分析する。資源ゴミ収集制度の実施有無、粗大ゴミ収集申告制の実施有無、容器包装プラスチック収集政策実施の有無、粗大ゴミ収集の有料化政策、ゴミ処理手数料などが、ゴミの量に影響する地方自治体の政策であると予測している。本年度は具体的に検証していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
地方分権による掃除事業に関するデータや情報を収集するためには、各自治体を訪問し、関係者との聴き取り調査を行う必要がある。掃除事業は市町村の業務であるため、1,700を超えるすべての自治体を調べることはできない。ゆえに、政令指定都市に限定して資料を収集することにした。政令指定都市に研究対象を限定した年度の後半であり、 関係者との聴き取り調査を行うために十分に時間を費やすことができなかった。
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次年度使用額の使用計画 |
政令指定都市の掃除事業に関するデータや情報を収集するために、27年度の4月から積極的に各自治体を訪問する。また、2年間の調査から不足する資料や情報を補う。アルバイトを雇い、資料の整理を助けてもらう予定である。
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