研究課題/領域番号 |
25380166
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 駒澤大学 |
研究代表者 |
山崎 望 駒澤大学, 法学部, 准教授 (90459016)
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研究分担者 |
高橋 良輔 佐賀大学, 文化教育学部, 准教授 (70457456)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 民主主義 / 代表制 / 直接民主主義 / 熟議民主主義 / 占拠(オキュパイ) / 正統性 / 動員と参加 / ステークホルダー民主主義 |
研究概要 |
現代世界における代表制民主主義の揺らぎについて分析すべく、代表制および代表についての考察を中心に研究を進めた。まず代表制民主主義を理論的および実証的に分析すべく、代議制および代表制、そして代表に関する思想史的研究および第二次世界大戦後の自由主義陣営諸国の代表制についての先行研究を精査した。 また近年の代表制民主主義の機能不全を指摘する議論として「ポストデモクラシー論(C・クラウチ)」や「政治の終焉論(A・ギャンブル)、C・ヘイらの議論を検討した。 その上で、研究分担者である高橋良輔(佐賀大)を代表とする政治社会理論研究会および、研究代表者の山崎望(駒澤大)と山本圭(日本学術振興会特別研究員PD、2014年4月より岡山大)が主催する民主主義理論研究会において、代表制民主主義の持つ可能性と限界についての考察を加えた。とりわけ代表制民主主義の形骸化を重視するあまりに「代表」の持つ意義を軽視するリスクを回避しつつ、理論的再検討を行い、直接民主主義と代表制民主主義の連続性を明らかにした。 研究実績としては、小田川大典(岡山大)の協力を得て、社会思想史学会(2013年、関西学院大)において本研究の研究実績ともいうべき共同セッションを山崎・高橋・山本の三名で行った。『社会思想史研究』に高橋がセッションを踏まえた論文を公刊予定である。また日本政治学会(2013年、北海学園大)においても山本が動員を参加をめぐる民主主義論を報告し、山崎がコメントを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的である、代表制民主主義の正統性の危機の分析と、新たな民主主義の形としての直接民主主義との関係性についての検討について、計画以上に研究が進展している。とりわけ代表制の概念史と現代におけるその困難性をめぐる議論について進展が著しい。世界各国で起きている占拠運動やデモについて、代表制の危機と直接民主主義の観点からのアプローチが着目されているが、直接民主主義と代表制の関係について、その断絶性を指摘する事が多かった従来の議論を越えた代表概念の提示まで研究が進展している。 進展の理由としては、第一に三名のみならず、民主主義論を専門とする研究者から構成される「民主主義理論研究会」および「政治社会理論研究会」という二つの研究会をプラットフォームとして、メンバーの相互交流から多角的な議論がなされている点が指摘できよう。 第二に社会思想史学会や政治学会、海外での国際学会での報告を通じて、より広く研究の途中成果を発信し、応答を受ける事でフィードバックをしている点が挙げられる。 第三にメールはもちろんのこと、IT技術を駆使する事で所属機関の距離や時間的なギャップを克服して研究に取り組む三名の間で有機的な連携が可能になっている事が挙げられよう。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究計画として、第一に熟議民主主義論、とりわけ社会における多様なアリーナにおける熟議の連携としてのシステムの形成による民主的正統性の調達の可能性について考察を進めたい。研究の進展について日本における熟議民主主義論の第一人者ともいうべき田村哲樹(名古屋大)の協力を得る計画である。 第二に、ウクライナで起きたキエフでの占拠運動に起因する政変と、ロシアからの「介入」とクリミア地域の「分離」とロシアへの「編入」という一連の出来事について、直接民主主義と代表制民主主義の正統性の衝突および異なるデモスの範囲(ウクライナとクリミア自治区)の正統性の衝突の問題として、実証研究の知見をかりながら理論的検討を行いたい。その際、歴史的な経緯と同時に軍事的な暴力の問題と民主主義の関係について考察を深める事に留意したい。 第三に日本における、一方での様々なデモの全国的な拡散と頻発と、他方での諸政党の脆弱化および自民党の巨大化を、代表制民主主義と直接民主主義の関係性から分析する計画である。
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