研究課題/領域番号 |
25380203
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
武田 知己 大東文化大学, 法学部, 教授 (20311897)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 日本外交 / 外交思想 / 新秩序 / 日米関係 / 日英関係 / 防共政策 / 国際関係論 |
研究概要 |
平成25年度は、まず、武田知己・萩原稔編『大正・昭和期の日本政治と国際秩序~転換期における「未発の可能性」をめぐって~』(思文閣出版、2014年)に掲載した「近代日本の「新秩序」構想の〈新しさ〉と〈正しさ〉―国際法・外交専門誌と外務省調書を題材として」である。本論文は、幕末から1930年代までの日本の対外構想を「極東新秩序」構築のための外交としてとらえつつ、19世紀末の日本は古典的な国際法や西欧列強の帝国主義とは一線を画すという意識を有し、アメリカの「モンロー主義」を19世紀的な外交理念を超克するものと評価していたことを明らかにした。しかし、米西戦争以後、日本はそうしたアメリカ外交の帝国主義化を正確に観察しつつ自らも帝国主義化していき、第一次大戦以降は、そのアメリカへの強い対抗心を強めてゆく様子を描いた。その際、ハーバード大学でのキャッスル文書の資料調査の成果を活用した。なお、本書の「総論」も申請者の共著になる。次に戸部良一編『近代日本のリーダーシップ~岐路に立つ指導者たち』(千倉書房、2014年)に掲載した「日英交渉とリーダーシップの逆説――一九三〇年代の日本外交を事例に」である。本論文は、満州危機がいったん終息した1933年以降の日本外交の特徴を「極東新秩序」構築と「日英妥協」の同時並行的な模索の過程ととらえつつ、1941年まで、日本外務省は日英交渉への希望を示し続けていたことを明らかにした。しかし、その担い手であった松平恒雄、吉田茂や重光葵の間には個性や手法の相違があり、継続性には限界があった。さらにイギリス側にも二重外交と言われた外務省と大蔵省の対立があったが、日本外務省はそうした対立を十分に捕捉できなかったことを明らかにした。 また本論文を踏まえた報告を国際シンポジウム(台湾、中央研究院、2014年3月15日)で報告した。その他の資料調査や読解も順調に進んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定していた松本忠雄文書の「松本記録」に関する目録と解説を公表することが出来なかった。理由は平成25年度に刊行した編著と論文の刊行がいずれも年度末までずれ込んだことと、年度末に国際シンポジウムで報告を行ったためである。また『昭和史の天皇』の取材資料も結局公開に至らずにいる。 しかし、当初の目的である二つの論文の公表とアメリカでの資料調査および台湾での資料調査は達成できた。また日本外交文書の調査も順調に進めることができた。最終年度に予定していた国際シンポジウムでの報告も初年度に達成できたので、ほぼ順調に進捗していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度の計画の柱を大幅に変更する必要は感じられない。当初の計画通り、26年度は国内における資料調査とマイクロ化の作業を中心に進めたい。夏休みなどの長期休暇を活用して作業するため、春から関係機関との連絡を密にしたい。また、平成25年度の台湾出張の費用は本基金外の費用で賄えたので、富山における松村謙三関係文書の調査を行いたい。なお、成果の公表に関しては、松本文書の目録と解説の公表を最優先課題とするが、以前より進めてきた戦間期の日英関係に関する翻訳書の刊行がほぼ見通せる段階に達したので、進捗状況を調整して訳書の刊行も視野に入れたい。また、最終年度(平成27年度)の研究成果の公表は単著作の刊行と国際シンポジウムでの報告を予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していたアメリカでのマイクロフィルム撮影が許可されなかったため、撮影費分が次年度へ繰越しとなった。 国内で必要なマイクロフィルムの撮影費として使用する。2014年度に加納久朗文書(千葉県)及び関係資料(国会図書館)等の撮影で使用を予定している。
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