研究課題/領域番号 |
25380203
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研究機関 | 大東文化大学 |
研究代表者 |
武田 知己 大東文化大学, 法学部, 教授 (20311897)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 日本外交 / 日中関係 / 日独関係 / 防共政策 / 外交政策研究 |
研究実績の概要 |
二年目に当たる26年度は、第一に、懸案であった「首都大学東京図書情報センター所蔵 松本[忠雄]文庫」の目録を『大東法学』に公表した。すでに2008年に刊行した同文書の目録の補遺であるが、本目録には戦間期の日中関係に関する史料を収録した。また、「書評 熊本史雄著『大戦間期の対中国文化外交 : 外務省記録にみる政策決定過程』」では、1930年代の対中外交を「文化外交」の視点から読み解く近年の議論と重ね合わせて筆者のアジアモンロー主義に関する考えを論じた。日中関係に関しては、台湾で収集した史料の一覧を作成した。 第二に、日独関係に関して、すでに発表していた「書評 石田憲『日独伊三国同盟の起源』」(東京財団政治外交検証プロジェクトブックレビュー、2014年3月5日)を踏まえ、「日独伊三国同盟への道と日本外交」(近刊)において、日独の「防共」外交という共通性と、中国をめぐる競合の状況とを対比させながら、日独間の提携の実質の欠如を指摘した。 第三に、日本の対アジア外交の特質がどのように開戦後そして戦後に展開されてゆくかを「日本と東アジアの未来を考える委員会」で報告した成果(平成26年度2月27日)をふまえ、「大東亜会議(1943年11月)をめぐって、二つの問題を提起する」というタイトルで公表する準備を行った。 第四に、現在の研究水準と知見を反映させた最新の戦争辞典『アジア・太平洋戦争辞典』(吉川弘文館、近刊)で12の項目を担当した。 最後に、こうした多面的かつ複雑な対外政策を読み解く上での資料調査や分析の重要性を、広島大学文書館のシンポジウム(2014年7月8日)で提起し、外交政策研究の知見を応用すべく、戦後との比較を意識した論考「戦後日本の政治制度の特質と外交政策の調整」を準備した(共著『政党と統治』吉田書店、近刊)。さらに加納久朗文書のマイクロ化の可能性を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
26年度は公表に至ったものは少ないものの、最終年度以降に刊行される予定の多くの論考を準備した。また、戦後70年関連で松村謙三の資料調査も行い、加納久朗のマイクロ化の準備を行うなど、当初予定されていた計画をおおむね遂行できた。
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今後の研究の推進方策 |
27年度に本学の国際比較政治研究所所長、国際政治学会の企画委員に就任した結果、長期休暇時の海外出張が難しくなっている。特に、秋に予定していたイギリスでの学会報告が実質的に不可能となった。また、加納久朗文書をマイクロ化には立地等の関係から予想以上の費用がかかることが判明したため、最終年度の計画を微調整しなければならない。 他方で、個別の論考は着実に公表の準備を行っており、すでに述べたもの以外にも共著と訳書の刊行が待っている。研究成果の公表は粛々と進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
台湾での国際シンポジウムに招待されたため、初年度の使用額が少なかった分、マイクロフィルムの撮影に回そうと考えたが、立地条件などの関係から予想よりも多額の費用がかかることが判明、その分、海外の文献を中心とした図書費等を行ったが、数千円の余りが生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
加納久朗のマイクロ化などに用いる予定。
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