研究課題/領域番号 |
25380301
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
松永 宣明 神戸大学, その他の研究科, 教授 (80127399)
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研究分担者 |
スクサバン ヴィサテップ 神戸大学, その他の研究科, 助教 (80599027)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | バングラデシュ / 企業家能力 / 縫製業 |
研究概要 |
予備調査に基づく研究成果として「バングラデシュの縫製業」と題する論文を執筆し,発刊した。これは独立以後のバングラデシュにおける経済発展を振り返り,特に1990年以降の経済発展がいかに進んでいったかを既存の研究・資料・統計に基づいて明らかにしたものである。要約すれば,豊富で安価な労働,MFAによる輸出割当,知識の波及,「特別保税倉庫制度」と「見返り信用状」の導入,同業組合の果たした種々の機能が,縫製業の急成長をもたらした要因であり,縫製業における企業家能力の形成・発展を促進した外在的要因である。 7月にバングラデシュの首都ダッカを訪問し,輸出促進局,縫製品製造・輸出業者組合,ニット製品製造・輸出業者組合,商工会議所,縫製業者など多数の関係者に対してインタビュー調査を実施しするとともに,現地の縫製業者を対象にしたアンケート調査を実施し,有効回答330社分を得た。また,縫製品製造・輸出業者組合のダイレクトリーを用いて全ての加盟業者(4426社)の特徴を明らかにし,アンケート調査を補った。 その成果に基づいて「企業家能力の形成・発展―バングラデシュ縫製業のケース」と題する論文を執筆し,発刊した。これは企業家能力の形成・発展という観点から,過去30年間に渡り目覚ましい躍進を遂げてきたバングラデシュ縫製業について,その躍進の秘密を探り,それを通じて企業家能力の形成・発展に関する知見を得ることを目的に執筆されたものである。アンケート調査の結果を踏まえた計量分析により企業家能力の形成・発展を促した要因を探る試みを行なった。推定結果から明らかになった点は,資本規模では職業経験と銀行融資,雇用規模では教育水準と社会関係資本,資本増加率では職業経験が企業家能力にとって重要であり,これらの特徴を有していれば企業家能力は相対的に高いということである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り,予備調査に基づく研究成果とアンケート調査結果に基づく研究成果として2本の論文を執筆し,発刊することができた。また,それを通して現行の研究方法の限界も明らかになり,次年度以降の取り組みをいかに改善すべきかが確認できた。 例えば縫製企業に対するインタビュー調査とアンケート調査は概ね順調に進んでいるが,後者についてはデータの信頼性が低い結果があり,そのため計量分析は限定されたものにならざるをえなかった。次年度以降は,調査結果の再確認を重視して計量分析に耐えうる十分な信頼性を確保したアンケート調査を実施する予定である。 インタビュー調査とアンケート調査に予定よりも時間がかかったため,商工会議所を通じた企業グループの解明については初年度の実施は不可能となり,次年度以降に実施することになった。
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今後の研究の推進方策 |
アンケート調査結果の信頼性を確保するためには,予定していた予算では足らないことが判明したので,サンプル数を減らすとともに責任を持ってアンケート用紙の回収・点検・再調査を行なう人を確保する。そのために予算がかかるため,同様のアンケート調査をチッタゴンで実施することは当面見合わせることにする。 商工会議所を通じた企業グループの解明については積極的にインタビュー調査を行なうとともに,現地の状況に則したアンケート調査を実施する。その際,データの信頼性を高めるために現地の大学研究者と緊密に協力して行なう予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
予定通り,現地でインタビュー調査とアンケート調査を実施したにもかかわらず,予算を次年度に回せることができたのは,別の予算が使用可能になったためである。 次年度においては,この繰り越し予算を利用して,インタビュー調査とともに信頼性を十分に高めたアンケート調査を実施する予定である。
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