本研究は、個人所得の格差が拡大していた戦前期日本の社会状況を精査することで、現代日本社会の行方について示唆を得ようとするものである。大正後期以降の戦前期においては、不況による中間層の生活難、高等教育修了者の就職難、工場労働者の労働条件の改善などの諸問題が頻繁に議論されていた。そして大震災も、社会的な思潮に大きな影響を与えた。これらは今日の日本の状況と大きく重なる。とりわけ、それらの諸問題に関わる富裕層や大企業経営者の言動は、戦時体制につながるその後の歴史の経過に大きな影響を及ぼした。現代日本においても、今後、彼らの言動が社会状況を左右する可能性がある。
|