紛争で発生した難民を元の居住地に帰還させ、元の社会に統合することは、ポスト・コンフリクト社会における重要な課題の一つである。だが、ユーゴスラヴィアのような民族間の内戦が起こった地域では民族的なマイノリティは民族対立の後遺症によって生活困難な状況に置かれ、地域によっては民族集団としての存続自体が危ぶまれる地点も存在する。マイノリティを元の社会に統合するためにはその前提として彼らの持続的な残留が可能になり、ひいては世代的な再生産が可能になる必要がある。 本研究はボスニア・ヘルツェゴヴィナに常住するマイノリティ住民の生活実態を調べ、彼らの持続的残留と世代的再生産の条件を明らかにした。
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