戦前期、日本の工場においてバレーボールは女子工員のレクリエーションスポーツとして普及した。バレーボールは、適度な運動として、女子工員が生産能率を上げるために導入されたものであり、日本では「女子に向いたスポーツ」とされていた。だが、呉海軍工廠バレーボールチームは、戦闘的で「男らしい」バレーボール文化を生み出し、全国の競技大会でも輝かしい成績をおさめていた。一方で、「男らしい」バレーボール文化の隆盛は、呉海軍工廠内での「労働運動の低調さ」ともパラレルな関係にあった。すなわち、そこには「男らしい」スポーツ文化と、支配階級に従順な労働者階級の文化が、同時に存在していたのである。
|