研究課題/領域番号 |
25380908
|
研究機関 | 久留米大学 |
研究代表者 |
安永 悟 久留米大学, 文学部, 教授 (60182341)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 協同学習 / LTD話し合い学習法 / 授業づくり / 高大接続教育 / 教師教育 / 論理的思考 / 言語技術 |
研究実績の概要 |
本年度までの実績として、本研究がめざす協同に基づく活動性の高い授業づくりに関して一定の授業モデルを構築することができた。すなわち、大学や専門学校における初年次教育を検討領域とし、論理的な言語技術の獲得を教育目的とする科目において授業モデルを開発し、その授業モデルの有効性を実践を通して確認できた。そこでは、協同学習の技法を活用した仲間づくりから始まり、協同学習の基本的な考え方と技法およびLTD話し合い学習法を、協同学習の多様な技法を体系的かつ重層的に活用しながら、体験的に理解させる。そのうえでLTD過程プランを基盤とした論理的言語技術を協同で学ばせ、アカデミック・ライティングの指導をおこなう。このような授業を体験することにより、基本的信頼感と協同の精神に満ちた支持的風土が形成され、真剣な態度で学び、互いに高め合うという望ましい雰囲気が醸成される。結果として、認知と態度の両側面において大きな変化成長を確認できた。特に、論理的思考の基盤となる批判的思考態度が、真剣な対話を通して改善されることが確かめられた。 LTDを基盤とした上記の授業モデルを参考に、現在、3つの高校でLTD授業を探索的に実践している。その成果に関しては2015年3月に開催したLTDに関する研究会にて検討し、今後の展開について意見交換した。 協同教育に関する教師の指導力向上をめざした「授業づくり研究会(協同教育フェスタを含む)」を継続的に開催した。2014年度は5回開催し、毎回、小学校から大学までの教師を中心に40名から70名の参加があった。そこでは協同に基づく授業づくりに関わる実践的・理論的研究について、参加者同士が積極的に交流しながら学びを深めている。 協同学習を含む過去のグループ学習の経験について高校生および大学生を対象に調査を行い、現在試みている協同による授業におよぼす影響を検討している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大学生および専門学校生を対象とした協同による活動性の高い授業づくりに関しては、一定の授業モデルを構築し、異なる学生を対象に、異なる教師がくり返し実施しても期待する効果がえられている。高校生を対象とした授業づくり、およびその成果についての検討も始まった。教師に対する研修は継続的に実施しており、毎回多数の参加者を得ている。グループ学習に関する過去経験と、開発した授業モデルにおける学習成果との関係についても、大学生および高校生を対象とした調査研究が展開している。これらの観点から判断するに、当初の研究計画は概ね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
授業は学習者と教師と教材の三者間の相互作用の結果として多様な様相を示す。従って、この三者の視点から現在展開できているLTD話し合い学習法を基盤とする協同による授業モデルをさらに検討する必要がある。 学習者に関しては、本授業モデルは大学生および専門学校生を対象としている。協同による授業は高校生を対象とした場合も有効であることは確認できているが、本授業モデルを高校生を対象に実践する場合の留意点や創意工夫についての検討が今後必要となる。 教師に関しては、協同学習に対する関心が高く、学習意欲の高い教師が増えてきた。しかしながら、協同学習の技法に注目するあまりに、その背後にある協同についての学習観や教育観についての理解が乏しく、協同学習本来の学習効果を十分に引き出せていない実践が少なからず認められる。本研究の最終目的を達成するためには、協同を基盤とした教師教育の充実を図る必要がある。今後とも「授業づくり研究会」を中心とした各種の研修の場を提供する。 教材に関しては、本授業モデルが論理的な言語技術の獲得を目的とした授業を対象に開発されており、他の教育内容を教材とした場合の有用性を検討する必要がある。現在、大学における専門科目や、高校における国語・数学・理科などの教科を対象に実践的検討を行っている。今後は、さらに多様な授業科目において、本授業モデルの有用性を検討する必要がある。 加えて、本授業モデルの有用性に関して、さらに詳細な実証的研究を展開する必要がある。本授業モデルの実践におよぼす学習者や教師の特性や履歴、教材の特性などの影響について検討を加える必要がある。最後に、本研究の研究テーマである高大接続教育について、これまでの研究成果を踏まえた提言を行う必要がある。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該助成金(次年度使用額)が生じた主な原因は、旅費および謝金の支出が当初の計画よりも少なかったことに起因する。旅費に関しては、研究協力者との会合が1回しか開催できず、会計処理の関係から、研究協力者への旅費を他の研究費から支出した点が大きい。謝金に関しては、授業記録と関連するデータ入力および簡単な統計分析に関する協力謝金が中心となり、高度な統計的分析や外国語による研究発信に係わる支出を予定していたが、実現できなかった点が大きい。
|
次年度使用額の使用計画 |
当該助成金(次年度使用額)の使途は、主に研究協力者の旅費、および研究成果のとりまとめと発信に係わる経費に充てる予定である。研究協力者の旅費は、2015年度が本研究の最終年度にあたるため、研究成果のとりまとめに複数回の会合を予定しているので、その旅費に充てる。また、研究協力者との学会報告に際しても旅費を支給する。研究成果の取りまとめに際して、専門家による統計的サポートを受ける必要が予想される。また、研究成果を発信する際、語学の専門家のサポートを必要とする。そのような経費にも当該助成金を充当する予定である。
|