研究課題
本研究計画の目的は、対人印象を形成する認知過程の潜在的(無意識的)側面に着目し、そのメカニズムを解明することであった.本研究では当初、特に視線方向を手がかりとしたインタラクション場面における顔印象の変容に焦点を当て、日常場面における印象形成過程を解明するための基盤となる研究知見を獲得することを目指していた.昨年度の段階で、計画開始当初には想定していなかった様々な要因が顔の印象形成に影響を与えることが分かってきた.さらに、そのように変化した印象が、その顔に対する潜在的な認知過程を変化させることが分かってきた。最終年度はネガティブな対人印象に焦点をあて、主にモラル違反の情報が無意識下でどのように処理されるかについて、実験的な検討を行った.一連の研究の中で、嫌悪刺激をプライミングすることによって、道徳違反行動の生起頻度が増加するなど、顕在的行動に影響を与えることが新たに明らかになってきた.具体的には、実験参加者が不正を行うことで得られる報酬額を増やすことができる状況を設定し、実験課題を行ったところ、嫌悪表情を事前に見せられた群は、中世表情を事前に見せられた群よりも、より多くの報酬を獲得し、不正行動がより多く生起したことが示された.また、この不正行動の増加は、嫌悪感受性などの個人特性によって変動することも明らかになった.また、魅力的な他者の顔写真を連続的に呈示されると、自己概念と道徳的概念の連合が弱くなるという新しい現象を発見した.この現象については、そのメカニズムを現在実験的に検討しているところである.これらの研究結果は、今後学会発表・論文などを通して国内外に発表し、さらに検討を進めていく予定である.
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Attention, Perception, & Psychophysics
巻: 78 ページ: 2397-2410
doi:10.3758/s13414-016-1198-0