本研究は中学校の討論を活発に行う「道徳の時間」の道徳授業の開発に関する研究である。研究期間の途中、2017年3月に学習指導要領の改正があり、2019年度より「特別の教科 道徳」(道徳科)となることが決定したので、道徳科における討論を活性化する道徳授業実践の開発研究として研究を進めた。 本年度の課題:①「道徳的価値に関する生徒間の合意をめざす学習展開モデルの開発」及び②「生徒間の合意を生み出す討論を展開できる教材及び指導案の開発と効果の検証」である。①に関してはトウ-ルミンモデルを活用した学習展開モデルを改善して、より精密な討論展開が可能となるようにした。その成果は日本道徳教育方法学会冬期研究会の講演及びその前に行われた川口市前川小学校の児童による公開授業実践(「命の順番」)及びその前日に行われた川口市榛松中学校における公開授業(「命の順番」)において公開した。 ②の課題に関しては、既存の教材(二通の手紙、『私たちの道徳』所収)を活用して、より活発な討論が可能となるよう授業展開の工夫として行った。具体的には問題解決型の道徳授業となるよう指導案の展開部分を改変し、前段を討論、後半を価値の考察と自覚にし、従来の形との比較検討を実際に授業を実践することによって行った。授業は小学校が「シンガポールの思い出」、中学校は「二通の手紙」を使用した。その結果、展開前段で「きまり(罰金)は必要か」・「きまりは必要ないか」、「入園させる」・「入園させない」という葛藤課題を設定し、①のモデルを使って討論させることで、後段における「丹野さんのことばに悩む主人公」についての児童の考えや「この年になって初めて考えさせられた」という主人公元さんのことばについての生徒の考えがより深くなり、確信的なものとなることが明らかとなった。 今後は、多くの中学校で実践を実施することでモデルのより精密化を図る予定である。
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