寺院は第一に宗教施設であり、信仰と祈念の場である。同時に仏書や漢籍を討究する学問寺であり、庶民に手習指南や読書指導を行ったり、蔵書を形成して書籍を貸し出したりする場でもあった。近代学校教育制度が現出する以前、近世社会において寺院は学問所であり、学校であり、図書館であった。いわば地域学習センター的役割を担っていた。近世社会に形成される知的環境の実態と特質を解明するため、地域の教育・文化拠点としての寺院への視角は欠かせない。 本研究を教育史と仏教史を結ぶ位置に据え、とくに近世寺院による庶民の文字学習への関与、私塾の学習ネットワークのなかの僧侶という側面を考察した。
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