平成26年度に引き続き、保型超関数の逆定理についての研究を行った。保型超関数とは、主系列表現の空間上の線形汎関数で、離散群の作用について不変性をみたすものである。まず平行移動に関する不変性から、保型超関数Tはフーリエ展開できることがわかる。また、Tをワイル元で捻った保型超関数T_{\infty}もフーリエ展開できるが、TとT_{\infty}の関係から、二つのフーリエ級数に関する等式、すなわち和公式が得られる。これらのフーリエ係数からL関数を作ると、和公式からL関数は関数等式をみたすことが分かる。一方、2次形式に関連したある概均質ベクトル空間のゼータ関数が、このL関数と全く同じ形の関数等式をみたすということを数年前に発見した。本研究の一つの大きな目標は、このゼータ関数を逆メリン変換することにより、保型超関数を構成すること、およびそれをポアソン変換することにより、実解析的保型形式を構成することである。我々の方法は、離散群の複雑さによらず適用でき、一般のレベルの合同部分群についてのマース形式に関する逆定理が定式化できる。従来のヴェイユの逆定理の証明は、そのままではマース形式には適用できないと思われていたが、我々のポアソン変換を用いた方法では、解析的な困難を回避できるのである。平成27年度では、特に、重さが半整数の場合(2次形式の変数の個数が奇数の場合)についての研究を行い、さらに、逆定理をリフティングに応用することについて検討した。これらの研究成果について、数理解析研究所、九州大学における研究集会や日本数学会年会などで研究発表を行った。
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