研究実績の概要 |
非コンパクト群の既約ユニタリー表現の構成を行う. (M,ω)をシンプレクティック多様体とする. ωはMのシンプレクティック構造である. ωはM上の閉2次形式なので2次のコホモロジーの元[ω]を定義する. この[ω]が整条件をみたすときM上の複素直線束Lとその接続αが定義される. αの曲率はdα=ωをみたす. Lie群GがMにハミルトニアン作用をしているものとする. すなわちGの無限小作用がM上のハミルトニアンベクトル場で表されるものとする. このときGの作用はωを保存しαを保存するL上の作用に持ち上げることができる. ∇をαに対応するL上の共変微分とする. すなわちsをLの大域切断としたとき∇_Xs=2πi<α(s),X>sとする. L上に接続αを保存する内積(,)が存在したとする. すなわちd=(s,t)=(∇s,t)+(s,∇t)みたす内積が存在したとする. このときLのM上の大域切断上にGのユニタリー表現が定義できる. 以上がGのM上のωを保存するハミルトニアン作用からGのLの大域切断上でのユニタリー表現の構成のあらましである. ω'を整条件をみたす別のM上のシンプレクティック構造としφを(M,ω)から(M,ω')へのシンプレクティック変換とする. このときφはω,ω'により導かれる上記ユニタリー表現のintertwinerに持ち上げられる. 今整条件をみたすシンプレクティック多様体(M,ω)とハミルトニアン作用をする連結Lie群をGとする. (M,ω)の持ち上げの上記接続つき複素直線束を(L,α)とする. 今Mにωとcompatibleなケーラー構造が入ったとする. するとMにはリーマン構造が入りω=dαにノルムが定義できYang-Milles汎関数が定義できる. αがYang-Milles接続であるとき対応するGのユニタリー表現について調べた.
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次年度使用額が生じた理由 |
GL_n(R)の既約ユニタリー表現を旗多様体の各座標近傍系をその中心で割ったシンプレクティック空間から幾何学的量子化のスキームに則り構成することを研究方針とした. その際若干の問題が生じることが判明した. そのひとつは上記シンプレクティック多様体, これをP(G/P)と表記した, を考える際もとの旗多様体G/Pの座標近傍をその中心で割った商空間の張り合わせを行わなくてはならない. 私はこの問題を扱ったプレプリント"Symplectic orbifold and irreducible unitary representations of GL_n(R)"のなかでこの張り合わせを中心Rの軌道による同一視により行った. しかし研究期間中にquotient stacsという概念を用いたグロタンディエーク位相で考えることによりよりシンプルに張り合わせの作業を遂行できスキームとしてP(G/P)を実現できるであろうことに気がついた. さらにP(G/P)のシンプレクティック構造をP(G/P)上の非線形σ模型を考えることによりよりすっきり説明できることにも気がついた. 以上新しい研究の発想が研究費の次年度使用という事態を招いた要因である. 今年度は張り合わせを考える必要のないべきゼロ群に話を限定し単純化したモデルで結果を出したい. 当初の計画に比べ海外出張が少なかったことにより経費が余った.
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