研究課題
本年度は、昨年度までに確立した分岐曲線に関する漸近展開公式を逆問題的視点から詳細に考察することを目標とした。さらに、特徴的な分岐曲線が現れる非線形項を持つ常微分方程式を考察し、詳細な漸近公式を確立することに取り組んだ。具体的には分岐曲線が無限回振動するような非線形方程式を考察した。この方程式は自励系なので、その分岐曲線の挙動はtime-mapを用いて考察可能ではあるが、実際の計算においてはいくつかの困難を伴う。それらの困難を巧みな積分計算により克服し、詳細な漸近公式を導いた。これらの順問題に対する成果を踏まえて、さらに逆分岐問題の解析に取り組んだ。考察する方程式に含まれる非線形項が未知であると仮定したとき、どのようなデータが与えられれば、未知の非線形項は特定できるか、またその精度はどのようにデータに依存するか、さらに考察する方程式に対して適切な逆問題の定式化とはどのようなものか、分岐曲線と非線形項が1対1対応であるための十分条件はどのようなものであるかなどの基本的な未解決問題を研究するためには、ある程度未知の非線形項の情報があらかじめ与えられている必要があること、さらにその条件はなるべく自然なものであることが望ましい。このことに着目し、本年度は、未知の非線形項があらかじめ与えられたべき乗の非線形項から摂動したものであるという状況下で逆問題を考察した。その結果、今後の非線形固有値問題の逆問題に関する研究の基礎となる一意性の結果を確立できた。さらに非線形項が3つの未知の係数を含む3次式であるとき、分岐曲線の大域的な漸近挙動と局所的な漸近挙動から、3つの未知の係数を特定できることを証明した。
2: おおむね順調に進展している
常微分方程式の分岐曲線の漸近解析に関しては、無限回振動する分岐曲線というきわめて興味深い研究対象を考察し、詳細な漸近公式を確立することができた。また逆分岐問題の研究においては、今後の非線形固有値問題の逆問題に関する研究の基礎となる、一意性の結果を確立できた。したがって、おおむね順調に進展しているといえる。
この2年間の研究成果は、主として数学的に興味深い形状の分岐曲線が現れる方程式を考察して得られたものである。このことを踏まえ、生物学や物理学に現れる現象をモデル化した方程式のは多岐にわたるので、その中でも特に具体的背景をもつ非線形微分方程式の分岐曲線の順問題に関する研究を推進していく。そこで得られた成果を足がかりに、分岐問題の逆問題の研究を推進していく。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 4件)
International Journal of Differential Equations
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