研究課題/領域番号 |
25400167
|
研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
柴田 徹太郎 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90216010)
|
研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 関数方程式論 / 分岐理論 / 逆問題 / 固有値 / 漸近解析 |
研究実績の概要 |
本年度は昨年度の研究を踏まえて、具体的な非線形項をもち、分岐曲線が無限回振動するモデル方程式に対する分岐曲線の漸近挙動およびその逆問題からの視点での研究を継続して行った。考察する方程式が自励系の常微分方程式であるので、いわゆるタイムマップ法を用いて問題の解析に取り組み、以下のような成果を得ることに成功した。 分岐曲線が無限遠で大きく振動するもの、比較的小さく振動するもの、および単調減少的に振る舞う3つの非線形項に着目し、まずそれらの分岐曲線の大域的挙動について詳細な漸近公式を確立することに成功した。 これらはタイムマップを精密に計算することにより確立することができた。さらに、この順問題に対する研究成果は、逆問題の研究に対する新しい視点からのアプローチにつながった。すなわち、非線形項が未知の関数であるとき、その分岐曲線の大域的な長さから未知の非線形項を決定することができるかどうか、といういままでの研究には現れてこなかったタイプの逆分岐問題を提唱した。そして分岐曲線の無限遠での振動が大きい場合には、その非線形項は単調減少する分岐曲線を与える非線形項と、分岐曲線の大域的な長さにより区別可能であることが判明した。 この研究成果は、非線形微分方程式の分岐曲線の逆問題の研究に対する新しい切り口を与え、逆分岐問題が、単なる線形固有値問題に対する逆問題の数学的研究の拡張ではないということを示している。また、今後の研究課題である、生物学や物理学、工学に現れる様々な現象の解析に新しいアプローチを与えた意義のある研究であるといえる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究成果を踏まえ、具体的な背景をもつモデル方程式に対する逆問題を定式化し、それに対する結論を得たことで、今後の非線形固有値問題の逆問題の対するひとつのアプローチが得られた。したがって、おおむね順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
この3年間で得られた研究成果は、非線形方程式の逆分岐問題に対するいくつかの有力なアプローチを与えた。特に分岐曲線が無限回振動する場合の解析は数学的観点から非常に興味深いものである。そこで、これまでに得られた知見を十分に活用してこの現象の解明に取り組んでいく。
|