本年度はこれまでの3年間で得られた研究成果を踏まえ、特徴的な非線形項を持つ非線形常微分方程式の分岐曲線の大域的な漸近挙動の解析と逆分岐問題の研究を行った。特に自励系の常微分方程式に有効であるタイムマップを新しい視点から適用するアプローチを開発し、次の2つの研究課題に関して、以下の成果を得ることができた。 (1)非線形常微分方程式の分岐曲線の漸近挙動の解析に関しては、分岐曲線の大域的・局所的構造の解明に取り組んだ。まず、自励系の非線形項を持つロジスティック方程式から派生する方程式を考察し、解の最大値ノルムが無限大になるときの分岐曲線とそれに対応する解の形状の漸近挙動に関する詳細な公式を得ることに成功した。非線形常微分方程式の分岐問題に関しては、研究期間を通して生物学的・物理学的現象などから導出された、自励系・非自励系の方程式の分岐曲線の大域的・局所的な漸近挙動の解析に取り組み、詳細な漸近公式を確立することができた。
(2)逆分岐問題に関して、本年度は(1)で考察した方程式に含まれる定数が未知定数であると仮定したとき、分岐曲線の大域的な漸近挙動から、未知定数を特定することに成功した。研究期間を通して、方程式の分岐曲線の大域的挙動のみから、未知の非線形項を決定できるか、逆分岐問題として決定しうる未知の非線形項の集合はどのようなものか、などの研究課題に、これまでとは全く違う新しい視点から取り組み、成果を上げることができた。これらの成果により、今後の逆分岐問題の新しい切り口からの研究に対する基礎的結果を確立することができた。
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