熱方程式の境界値逆問題では「指示関数」と呼ばれる関数の漸近挙動の解析から空洞や介在物の情報を引き出すことになる。この研究ではレゾルベントの漸近挙動の解析を経由してこの情報を引き出すことを目標にした。まず、内部が狭い意味で凸な空洞の場合に積分核の詳細な評価を導くことにより、一つの観測データのみからこの空洞を含む領域を導くことができた。この結果は空洞が複数個の狭い意味で凸なものからなる場合に拡張できた。この問題設定は一次元の場合の逆問題の自然な拡張になっている。さらに、指示関数の漸近挙動とレゾルベントの漸近挙動とには密接な関係があることがこの研究を通じて明らかになった。
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