研究課題/領域番号 |
25400211
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 東京都市大学 |
研究代表者 |
金川 秀也 東京都市大学, 共通教育部, 教授 (50185899)
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研究分担者 |
前園 宜彦 九州大学, 数理(科)学研究科(研究院), 教授 (30173701)
税所 康正 広島大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (70195973)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 対称統計量の漸近理論 / エッジワース展開 / 時系列データ / 変化点解析 / 非線形シュレディンガー方程式 / 確率微分方程式 / オイラー・丸山近似 / 信頼区間 |
研究概要 |
時系列データ解析において推定、検定のために有効な統計量である対称統計量の漸近理論、特にエッジワース展開の研究を行った。研究分担者である前園宣彦氏、税所康正氏との研究連絡を行い上記の研究について共同研究を行った。さらに北垣客員教授と連携研究者として数値実験の立場から、共同研究を行った。 研究成果としてDiscrete and Continuous Dynamical Systems, Supplement Volume (2013)では非線形シュレディンガー方程式で表されるようなシステム上の時系列データの変化点分析について発表した。またTheoretical and Applied Mechanics Japan, Vol.62 (2014)では確率微分方程式を対称統計量に似た近似解を構成しその分析を行った. 漸近理論を従属確率変数列に拡張するためにこれまで多くの手法が提案されてきた。この時従属確率変数列を独立確率変数列で近似しその誤差項を評価する方法が使われたが、本研究でも吉原健一氏との研究によって、対称統計量に関する漸近理論を従属確率変数列の場合に拡張した。また退化型だけでなく非退化型対称統計量についても従属確率変数列の場合への拡張を行った。国内連携研究者である吉原健一氏との共同研究によって、対称統計量の代表的な統計量であるU-統計量と形が近く、U-統計量に関するエッジワース展開に応用できることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データの基本的な性質が変化した時点を発見するための変化点解析のようなランダムデータの時系列解析において対称統計量の理論は重要な手法である。このような応用を想定して、時系列データ解析において推定、検定のために有効な統計量である対称統計量の漸近理論、特にエッジワース展開について研究した。 現時点で、これらの成果がほぼ論文としてまとめることが出来た。現在この論文を統計学会誌に投稿する準備中であり、7月中には投稿する予定である。本論文では取り扱いが困難である対称統計量の核関数が退化している場合について主に考察している。核関数が非退化の場合はH-分解と呼ばれるマルチンゲールを用いた解析が可能であり、漸近展開などの詳しい理論が知られている。一方、Cramer-Von-Mises 統計量のように対称統計量の核関数が退化している場合はH-分解が適用できないために非退化型のような精密な解析が困難であった。 本論文では、ある種のヒルベルト空間に値を取る確率変数列の単純和の漸近挙動と対称統計量の関係について示している。この結果を改良して対称統計量をヒルベルト空間に値を取る確率変数列の単純和によって表現し、次にヒルベルト空間値確率変数列の和に関する漸近性を調べるという2段構えの手法を取ることで問題を解決出来た。
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今後の研究の推進方策 |
退化型対称統計量のエッジワース展開についてV.Bentkus, F.Gotze, Ann. Prob.(1999)によってO(1/n )の誤差オーダーまで広義の中心極限定理の精密化が行えることが示された。今後の研究において、ある種のヒルベルト空間に値を取る確率変数列の単純和で退化型対称統計量を近似する方法を用いて、さらに精度の良い評価を求めることができると考えおり、モスクワ大学教授である海外共同研究者Ulyanov 氏と共同研究を行う。 さらに研究分担者である前園宜彦氏と独立確率変数列に対して非退化型対称統計量のエッジワース展開とその統計的な応用についてY.Maesono, Communications in Statistics-Theory and Methods(2010)やY.Maesono, S.Penev, Annals of the Institute of Statistical Mathematics (2010) など研究成果を従属確率変数列の場合に拡張することを考える。この研究のために、国内連携研究者である横浜国立大学名誉教授の吉原健一氏と、独立で同分布確率変数列を強混合性やφー混合性のような弱従属確率変数の場合に拡張する研究を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
国際会議 The 59th World Statistics Congress (WSC) に参加を予定していたが、大学での業務の都合で出席が出来なくなった。また研究分担者と研究代表者との日程の都合がつかないことから、予定していた研究分担者との研究連絡についても予定通り行うことが出来なかった。以上の理由により、次年度使用額が生じた。 The 59th WSCでの講演を予定していた研究論文を、2014年7月に台北で開催される国際会議 ICM Satellite Conference 2014 で講演する。また、主に8月、9月に研究分担者と追加の研究連絡を行う。
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