研究課題/領域番号 |
25400474
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 独立行政法人海洋研究開発機構 |
研究代表者 |
小守 信正 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球シミュレータセンター, チームリーダー (80359223)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 海洋物理・陸水学 / 気象学 / 大気海洋相互作用 / データ同化 |
研究概要 |
局所アンサンブル変換カルマンフィルタ (LETKF) を用いて大気の観測データを大気海洋結合モデル CFES ヘ同化するシステム CFES-LETKF のプロトタイプを整備し、2008年8月から2ヶ月間の同化実験結果 (CLERA-A) の解析を進めた。特に、既存の実験的アンサンブル大気再解析データ (ALERA2) およびこれを外力として海洋大循環モデル OFES を駆動したアンサンブルシミュレーション (EnOFES) と比較を行った。 CLERA-A の海面水温のアンサンブルスプレッド(メンバー間のばらつき具合)は EnOFES よりもやや大きくなる傾向が見られ、これは CLERA-A の短波放射のアンサンブルスプレッドが ALERA2 と比べて大きいことが主因であることを明らかにした。一方、海洋内部に関しては、密度躍層付近に見られるアンサンブルスプレッドの極大が、CLERA-A の方が EnOFES よりもやや小さくなる傾向が見られた。 また、熱帯太平洋におけるアンサンブルメンバー間での水温の空間相関を計算したところ、EnOFES では基準点のごく近傍のみが高相関なのに対し、CLERA-A では海盆全体に及ぶ大規模な構造が表層から亜表層にかけて存在することを見出した。現在、詳細な解析を行っているところであるが、大気海洋結合モードがこのような形で現れている可能性が考えられる。また、このことは、海洋の観測データを同化するシステムを構築する場合に、海洋大循環モデルを用いる場合と大気海洋結合モデルを用いる場合とで、アンサンブルによって推定される誤差共分散行列の構造が大きく変わり得ること、したがって、LETKF で用いるべき局所化スケールなどのパラメータの値も大きく異なり得ること、を示唆する重要な結果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
大気海洋結合アンサンブルデータ同化システム CFES-LETKF プロトタイプは、本研究課題の開始後にいくつか計算上の問題点が顕在化したものの、それらは全て解決され、より安定かつ妥当な結果が得られるシステムとなった。 また【研究実績の概要】で記載した結果は、大気海洋結合モデルを用いたデータ同化を行うことにより、海洋大循環モデルを用いた場合よりも質的に大きく向上した結果が得られる可能性を示唆しており、未だ発展途上の大気海洋結合データ同化研究を encourage するものである。初年度からこのように重要な結果が得られたことから、研究は順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
【研究実績の概要】で記載したデータ同化実験 (CLERA-A) 結果の解析を進めて論文にまとめ、国際誌に投稿する。 また、海洋におけるアンサンブルスプレッドや異なる変数間の共分散に関するこれまでの知見に基づき、現状の大気海洋結合アンサンブルデータ同化システム CFES-LETKF プロトタイプに海洋観測データを同化し海洋場を修正する機能を追加した、改良版のデータ同化システムを構築する。このシステムを用いて、主に海洋の局所化スケールを変えた実験を行い、海洋観測データが同化結果に与える影響を調査する。 さらに、大気変数と海洋変数の間の相互共分散を利用することにより、大気観測データから海洋表層の高周波変動成分を直接的に修正することを試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度は、新規の実験・計算の実施よりも実験・計算結果の解析に重点を置いたため、当初の計画ほどのデータが生じず、データ格納用の大容量ハードディスクの購入を先送りしたことが主な理由である。 平成26年度以降も新規の実験・計算は実施するため、「次年度使用額」の分はデータ格納用の大容量ハードディスクの購入に充て、平成26年度分として請求した助成金は、当初の計画通り学会参加費・旅費や論文投稿料などに使用する予定である。
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