研究課題/領域番号 |
25410091
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研究機関 | 岐阜大学 |
研究代表者 |
沓水 祥一 岐阜大学, 工学部, 教授 (80214964)
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研究分担者 |
三輪 洋平 岐阜大学, 工学部, 助教 (10635692)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 超分子化学 / 自己組織化 / ナノ材料 / 双連続キュービック相 / アゾ化合物 / 光誘起相転移 |
研究実績の概要 |
申請者らは、最近、双連続キュービック液晶相(Cub_bi相)を形成する化合物にアゾ化合物を添加した二成分系において、紫外光照射により1次元秩序相スメクチックC(SmC)相から3次元のネットワーク構造を有するCub_bi相への相転移が誘起されることを発見している。本研究の目的は、以下の2点である。(1)この光誘起SmC->Cub_bi相転移をナノレベルならびに分子レベルから調査し、その物理化学を解明する。また、その知見を生かし、(2)ナノ構造の次元性を光で自在に制御する新しい材料学の創製を行う。 平成26年度は、前年度の研究を継続し、また新たな試みに挑戦してきた。具体的な研究実績を以下に示す。 (1)光誘起相転移の温度ならびにアゾ化合物の添加濃度依存性を詳細に検討し、アゾ化合物の最適濃度は15~20mol%であり、従来の光駆動液晶系と比較して高濃度のアゾ化合物が必要であることがわかった。(2)SmC相から、これまでのIa3d対称性のCub_bi相でなくIm3m対称性のCub_bi相への誘起挙動を調べ、後者の方がかなり起こりにくいことがわかってきた。すなわち、添加物のアゾ化合物の光異性化は、その二成分系の高温側の相が何であっても等しく誘起可能というわけでない。(3)フェニルヒドラジン系キュービック液晶性化合物とアゾ化合物の二成分系試料における転移の光誘起挙動を調査している。 (4)アゾ基を有するフェニルヒドラジン系キュービック液晶性化合物の設計と合成に挑戦し、アルキル鎖長の異なる複数の化合物を新規に合成することに成功した。そのうち、一つはSmCとカラムナー(Col)相、さらには目的の二種類のCub_bi相を発現することが見出された。この化合物のIa3d対称性のCub_bi相に光照射することで高温側のCol相を光誘起できることが見出された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度の研究実施計画は、 [1]SmC相からIa3d対称性のCub_bi相への光誘起相転移のメカニズムを詳細に検討する。[2]SmC相から別のタイプのCub_bi相、Im3m対称性のCub_bi相への相転移の光誘起の詳細を検討する。 [3]フェニルヒドラジン系キュービック液晶性化合物とアゾ化合物の二成分系試料を調製し、転移の光誘起挙動を調査する。特に、SmC相の低温側にCub_bi相を発現する系の開発に挑戦する。 [4]アゾ基を有するフェニルヒドラジン系キュービック液晶性化合物の設計と合成に挑戦し、一成分での光誘起転移現象の実現を目指す。 であった。このうち、上記研究実績から明らかなように、[1]、[2]、[4]はかなりの程度遂行・達成している。[3]のSmC相の低温側にCub_bi相を発現する系の開発にはまだ成功していないが、それは従来のアゾ化合物とフェニルヒドラジン系キュービック液晶性化合物の相容性の悪さが大きな原因となっていて、それが最適の二成分系構築の障害となっていた。しかし、[4]のアゾ基を有するフェニルヒドラジン系キュービック液晶性化合物の開発成功により、この障害は克服されると期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度も、本研究の(1)この光誘起SmC->Cub_bi相転移の物理化学解明、および(2)ナノ構造の次元性を光で自在に制御する新しい材料学の創製という目的を可能な限り高度に実現すべく、引き続き、以下の4項目を集中的に検討する。 [1]SmC相からIa3d対称性のCub_bi相への光誘起相転移の、特に転移速度などの定量的な側面を解明する。 [2]SmC相から別のタイプのCub_bi相、Im3m対称性のCub_bi相への相転移の光誘起挙動を、SmC相からIa3d対称性のCub_bi相への光誘起相転移と比較し、メカニズムの詳細を検討する。 [3]フェニルヒドラジン系キュービック液晶性化合物とアゾ化合物の二成分系試料において、SmC相の低温側にCub_bi相を発現する系の開発実現を目指す。その際、[4]で開発した、アゾ基含有フェニルヒドラジン系化合物を利用することにより、その実現性は高くなると考えている。 [4]アゾ基を有するフェニルヒドラジン系キュービック液晶性化合物一成分だけの熱および光転移挙動のアルキル鎖長依存性など詳細検討から分子構造のさらなる最適化を行う。
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