右手と左手の関係にある化合物(=キラル化合物)のうち望む一方のみ(=光学活性体)を選択的に合成する技術の開発は,有機合成化学における主要テーマの一つであり,特に医薬品の開発などにおいてその需要は大きい。筆者らは,一般的方法では合成の難しい特異な分子骨格を一気に構築できる光化学反応において,その技術開発を行った。反応を司る触媒を独自に設計し,安価な市販試薬から数工程で所望の触媒を合成する経路の開発に成功し,その性能評価を行った。改善の余地はあるものの,満足し得るレベルでキラル化合物の作り分けに成功し,今後,触媒分子の改良によりさらなる発展が期待できる成果を得た。
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