研究課題
研究対象とした連続剖検多系統萎縮症(MSA)症例49例における検討では24 %で臨床的に認知機能障害が認められており、臨床的probable MSAの17例を対象とした高次機能の前向き検討の結果(Kawamura K, Shimohata T et al. 2010)の31%に近い結果であった。1例でAlzheimer diseaseの合併を認め、その他の11例では認知機能障害の責任病巣とみなし得る他疾患の合併は認めなかった。肉眼的に、5例(42 %)では明らかな前頭側頭葉の萎縮を認めた。臨床亜型別では、MSA-Cで23%, MSA-Pで28%であり有意な差を認めなかった。また、認知症を呈した症例の平均死亡時年齢は67 (59-74) 歳であり、その他の症例と有意な差は認めず、罹病期間は平均8.8(3-19)年と様々であったが、10年以上の症例が6例と50%を占め、49例全体に占める10年以上の症例の割合27%より明らかに高かった。以上より、発症からの時間経過が長くなることが認知機能障害の発生に影響している可能性が推測された。認知症を認めたMSA症例5例と、認めなかった症例4例における定量的検討では、前頭葉皮質および被殻の神経細胞密度に両群間で差は認めなかった。しかし、尾状核においては、認知症群では、非認知症群に対して密度が低い傾向を認めた。一方、いずれの部位においてもリン酸化αーシヌクレイン陽性封入体を有する神経細胞や、オリゴデンドログリアの密度は、両群間で有意差を認めなかった。以上より、長期罹病に伴い、病変が進展したMSAにおいて、前部線状体である尾状核への変性の進展により大脳皮質基底核ループの伝達障害が惹起され、認知機能障害の発症に関わっている可能性が示唆された。
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