研究実績の概要 |
多細胞社会のなかで生命現象はどのような時空間パターンで起こるのか?その包括的理解を目標に2013年度より研究を進めてきた。当初に計画した研究の内容については、2015年度の途中でほぼ達成が見込まれ、 今年度の研究は11月で完了とした。当研究課題の成果は、平成28年度より交付をうける新学術領域・公募研究へ繋げていく予定である。
・第4世代Fucci, Fucci4の性能評価を、培養細胞を用いて完了した。またFucci4のfloxマウスの作製・導入を完了した。今後、全身性および組織特異的Creマウスとの交配により得られる胎児や個体を材料にして、細胞周期とDNAダメージとの相関を解析していく。 ・低酸素+ストレス環境+細胞周期を同時に可視化するためのtricistronic発現系を用いて、恒常発現細胞株の作製をすすめた。細胞はNMuMG, MCF10A, 293Tなど。対数増殖期におけるストレス感知が細胞種によって異なること、また同じ細胞種でも、培養の密度や空間次元によって異なることが明らかになった。こうした知見をさらに個体レベルで解析するために、flox マウスの作製を計画する(次の科研費課題に引き継ぐ)。 ・定性的観察が可能なエピジェネティクスプローブを完成させ、DNAメチル化を抑える薬物に対する培養細胞個々の反応をタイムラプスイメージングで観察することに成功した。 ・糖代謝のフローを可視化するプローブの作製を完了した。
細胞個々の状態および運命を可視化するプローブの作製、性能評価を進めながら、細胞個性の多様性を再認識する機会がたびたびあり、一細胞リアルタイムイメージングの必要性を痛感した。当初の研究課題については、培養細胞レベルの研究内容がすべて完了した段階で終了とし、今後の研究課題では、主にfloxマウスの作製と解析を行いながら、生命現象の時空間パターンをより生理学的な文脈で理解することを目標に据える。
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