研究課題/領域番号 |
25440176
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
原 弘志 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (00173071)
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研究分担者 |
松岡 聡 埼玉大学, 理工学研究科, 助教 (90509283)
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研究期間 (年度) |
2013-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 二成分制御系 / 二成分制御系 / 細菌リポタンパク質 / 機能ドメイン構造 / タンンパク質間相互作用 |
研究実績の概要 |
Rcs 二成分制御系は,細胞質膜(グラム陰性菌内膜)のヒスチジンキナーゼ(HK)RcsCから細胞質のレスポンスレギュレーター(RR)RcsBへのリン酸転移を,内膜のホスフォトランスミッター(HPt)RcsDが仲介する多成分のリン酸リレー系で,腸内細菌の宿主体外排出時・バイオフィルム形成時などに細胞表層に加わるストレスに応答して活性化される.その活性化に,外膜リポタンパク質RcsF が必須である.内膜局在型やペリプラズム遊離型に改変したRcsFが強くRcs系を活性化することを見出し,内膜のRcsCと容易に相互作用できるようになったためと解釈できる. ペリプラズムタンパク質であるmaltose-binding protein (MBP) のシグナル配列にRcsFを融合させたものから,RcsFのN末端付近にあるProline-Rich Region (PRR)を欠失させたもの(MBPss-RcsFΔPRR)はRcs系を強く活性化させる. RcsCのペリプラズム突出領域をMBPと融合させたタンパク質(MBP-RcsCperi)を発現させるとRcs系活性化が抑制された.この結果は,MBP-RcsCperiがMBPss-RcsFΔPRRに結合して,その働きをtitrate outしたためと考えられる. RcsFΔPRRとMBP-RcsCperiを発現させた細胞をホルムアルデヒドで処理したものを,SDSゲル電気泳動の後,ウェスタン解析すると,抗RcsF抗体と抗MBP抗体で共通して約200kDaの架橋タンパク質が検出された.これは,RcsFΔPRRとMBP-RcsCperiだけからなると考えると,RcsFΔPRR 4分子とMBP-RcsCperi 2分子からなるものと一致する.RcsFがRcsCと直接相互作用して情報を伝達することを示唆する結果と解釈できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Rcs二成分制御系について,その活性化に必須の外膜リポタンパク質RcsFとヒスチジンキナーゼ(HK)RcsCの相互作用を示唆する結果を,ホルムアルデヒドによる架橋反応を利用して得ることができた. 一方,RcsFとRcsCの相互作用をより直接に示す試みについては,RcsFの機能に分子内ジスルフィド結合が必要であることがわかったため,細胞質内で相互作用を検出するtwo-hybrid実験は不適切であると考え,細胞質外での相互作用検出法が必要であると判断した.二分割eYFP 断片との融合タンパク質間の相互作用を蛍光で検出するBiFC(bimolecular fluorescence complementation)法の適用を試みている.大腸菌ではSec 経路で分泌されたeYFP は蛍光を発しないので,融合タンパク質をTAT 経路で分泌させる工夫が必要だと考え,ベクターの構築を始めている.ポジティブ対照としてロイシンジッパーを融合した二分割eYFP 断片で,ペリプラズムに弱い蛍光を検出できることがわかった.
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今後の研究の推進方策 |
rcsC遺伝子をクローン化し,そのペリプラズム突出領域に相当する部分に欠失や挿入変異を導入し,rcsC欠損変異株でRcsCとしての機能を発揮するかどうか調べる実験を進めている.この実験は,RcsCのペリプラズム突出領域中でRcsFと相互作用して情報を受容するドメインを調べる意味において,MBP-RcsCperiによるtitration実験と相補的なものである. BiFC実験のポジティブ対照実験では,観察された蛍光がたいへん暗いので,eYFPに代えて,そのより明るいデリバティブであるVenusを用いて,ベクターを再構築したうえで,RcsFΔPRRとRcsCのペリプラズム突出領域を融合させたタンパク質を発現させ,ペリプラズムにおけるBiFC実験を試みる. RcsC・Dは相似の膜貫通構造をもち,RcsCのC末端のアスパラギン酸を含むレシーバードメイン・RcsDのC末端のヒスチジンを含むホスフォトランスミッタードメイン以外の部分のアミノ酸配列が類似していることから,HKであるRcsCだけでなく,RcsDもRcsFからの情報を受容している可能性が高いと考え,RcsDについても,ペリプラズム突出領域をMBPに融合させてtitrationを試みる実験を行なっている. 最近,Rcs系を負に制御している内膜タンパク質YrfFがRcsFと相互作用しているという報告があった(Cho et al., 2014).これはMBP-RcsCperiによるRcs系活性抑制と矛盾する結果なので,YrfFのペリプラズム突出領域をクローン化してMBP-YrfFperiを作成し,その効果を調べる必要がある.
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次年度使用額が生じた理由 |
当初,極微量分光光度計NanoDrop 2000を購入する予定を立てていた.ところが,実験室面積を半分以下に縮小する必要に迫られ,設置場所が確保できるかどうか不安が生じたために,購入を断念した.
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次年度使用額の使用計画 |
極微量分光光度計NanoDrop 2000の購入を再検討する. 一方,PCR用のサーマルサイクラーが旧式のサーマルサイクラーを含め2台しかないので,もう1台の補充が必要であると考えている.
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