ヒノキ人工林において間伐を実施すると下層植生が発達する。下層植生は窒素濃度の高い落葉を供給して土壌の窒素資源を改善する効果が期待されるが、土壌の窒素資源に対してはヒノキと競争関係にある。高知県ヒノキ林において間伐10年後の樹冠窒素量は、間伐した林分で低く維持されていた。ヒノキの葉量回復速度が遅いため窒素吸収の増加は限定的であった。ヒノキと下層植生の土壌の窒素源を窒素安定同位体比で評価した結果、対照区ではヒノキと下層植生が異なる窒素源、間伐区では共通の窒素源を利用していた。間伐によってヒノキと下層植生の窒素をめぐる競争は緩和された。
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